読書メモ 人間安全保障論序説
「民衆の安全保障と人間の安全保障」について
上記記事に関連して、ハードディスクにあったものをバックアップを兼ねて掲載
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読書メモ
人間安全保障論序説―グローバル・ファシズムに抗して
武者小路 公秀 (著)
2003 国際書院
2005-5-6 読了
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目次
第1部 グローバル覇権の構造と行動(グローバル化の危機的性格
「新世界秩序」としてのグローバル覇権の構造
反テロ戦争による米国覇権の強化 ほか)
第2部 人間安全保障と人間安全共同体(「人間安全保障」と非改良主義的改良のための政策科学
「人間の不安全」と人間安全共同体
「安全共同体」の理論的精緻化 ほか)
第3部 文明間の対話による共通の人間安全保障(国家安全保障の文明論的限界
アジア主義と普遍主義
東洋と西洋との文明間対話 ほか)
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感想
連休中に読んだ
考えるべきポイントはいくつもある。
民衆の安全保障との対比
緒方・センの報告書を評価する戦略の是非
メモ
まえがき
「人間安全保障」ではなく、人間の不安全について研究すること
その3つの視点
1、最も不安全な状況に置かれている民衆の日常世界から出発して、グローバル・ガヴァナンスの仕組みを批判的に捉える「人間安全保障論」論
2、国際関係論だけでなく、開発理論などを含めた社会科学が、無批判的に近代化を肯定して、民主主義と自由主義経済に向かって歴史を進めていければ、そこに安全で平和な世界が生まれるという「常識」を疑うこと。
「人間安全安全保障」論の基本的な分析の単位を、近代主義科学がするように「個人」と国家のみとすることをやめて、むしろ「共同体」「コミュニティ」を中心に据えることを提案
3、多文化的な視点
5~6p
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イリッチの視点ともつながるが、近代化を経由しない第三世界の未来、
これが、サブシステンス志向か?
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分析の単位は個人ではなく、コミュニティ
民衆の安全についていちばん良く理解しているのは、各地域の有機的知識人
グラムシ
5~6p
1章
反テロ戦争は、南からの移住労働者・人身売買被害者の人間安全の脅威を増大させる「人間安全保障のジレンマ」の悪循環を従来にも増してエスカレート 21p
文明間の共通の安全保障
「文明間の対話」を国連が呼びかけた年に反テロ戦争
この逆説を嘆くかわりに、むしろ反テロ戦争という極限状況を人間の安全保障についての文明間の対話を進める好機とすべき
26p
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このオプティミズム!!
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北のNGOとマイナリティ運動の代表者の間で、かなり合意が難しい問題
世界の市民たちと被差別群集の間に共感が持てることを実証したダーバンの事例
47p
第5章
覇権的安全保障から非覇権人間安全保障へ
69p
「激動の世界と途上国」高橋一生・武者小路
『世界』2002年5月「『人間の安全保障』についての公開書簡
「人間の安全保障」は「人権」、「人間の発展」と合わせて、人間中心の価値理念であり、国家を超える人間社会の認識枠組みを提供するもの
78p
冷戦後のグローバル化は、ただ客観的な国際経済現象ではない。それは一定の政治的意図をもつ覇権勢力の政策指導のもとにおこなわれている国際政治経済の新しい制度化現象である。82p
第2部第1章
「人間の安全保障」と非改良主義的改良のための政策科学
人間の安全保障委員会の報告書によれば
「人間安全保障の目標はすべての人々のLifeの死活に関わる中核にあるものを、人間の自由と達成とを促進するように守る」もの
この定義は「人間安全保障」の本質的なところをよく捉えている。
国家による民衆の基本的自由の保護を要求する側面とともに、民衆自身の自由つまり能力と意欲に支えられる「エンパワメント」の側面を持つことを強調している。103p (民衆の能動性の保障)
==この先の部分に先日引用した部分(民衆の安全保障についてとか、塹壕戦だというところ)があったが、省略==
*「非改良主義的改良」は、訪日講演(アソシエ、2002年4月21日)の際にNancy Frazerが強調した論点による。改良主義は、体制の枠内での問題解決のみに政策を限定する主義であるが、「改良」政策の中には、これを推進すれば、必ず体制自体の変革につながらざるを得ないものもある。非改良主義的改良とは、初めから体制変革を打ち出さないけれども、その推進する改良が、必ず体制そのものの変革を導き出す「改良」をいう。
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この非改良主義的改良という戦略の是非の問題。
彼我の力関係の中で常に体制を承認する改良主義に巻き込まれていく危険は大きい。そのような状況の中では改良主義のエクスキューズに使われたり、知らず知らずのうちにべったりしたただの改良主義以外の何者でもないものになってしまいがちである。権力側が変革のための言説を骨抜きにし、自らの用語に置き換えていった例は枚挙に暇がない。「非改良主義的改良」を戦略として位置づけうるとするならば、少なくとも、単なる改良主義との違いを担保する構造を、その戦略を行使する側が常に意識していなければならないように思う。
また、改良が可能であるかのような言説の中で体制が補完されていくことのデメリットにも注目する必要があるだろう。
===読書メモここまで===
とりあえず、第2部1章までのところで適当にピックアップしただけでメモは力尽きている。次章以降については、できたときにまた。
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