キンチの抵抗論 PP44号から
季刊PP44号が出ている。
このページから目次と二つの記事を読むことができる。
ひとつは山口響さんの「特集にあたって」
ここにこの特集の意図が紹介され、「裁判員制度のどこが問題か」というわかりやすい視点も提示されている。
もうひとつの記事は白川編集長の「世界を震撼させる金融恐慌」
現状の説明がされており、次号の特集「金融恐慌─資本主義はどこへ行く? そして我々は?」につながっているが、ここではオルタナティブについては「求められているのは、金融資本主義に対するオルタナティブである。安心して働き、暮らしを営むことのできる経済と金融の新しいシステムとは何か。私たちの構想力が問われている」としか書いていない。もうちょっと何か書いてよ、っていう感じもしないわけではないが、まあ、次号に期待しよう。
で、今日、ここで紹介したかったのはラオ・キンチの<<「市場の力」に対する中国農民の多面的な抵抗>>
ここで、中国農民の抱える問題に触れ、その多面的な抵抗について紹介した後、総論として以下のように書いている。
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抵抗とは、直接的な対決による反対の表明や、根本的な革命的断絶という姿でのみとらえられてはならない。私たちは、街頭での抗議行動や劇的な反乱にだけ焦点を当てる主流メディアのやり方から距離を置く必要がある。問題をすべてそのせいにできるようなただ一つの外部の敵というものは存在しないのだ。民衆の大義に敵対するもろもろの力は、巧妙で手の込んだ次元で活動している。だから、いろいろな力の複雑な関係の網の目のなかで行われる抵抗もまた多面的である必要があり、必ずしも一回の包括的で不意の一突きで獰猛な力を覆すことを狙うのではなく、多様な努力を通じる累積的効果をめざすべきなのである。すなわち、コミュニティの集合性を破壊する日常生活に根差した問題に取り組むことで、人びとの間に有機的関係を発展させるプロセスを起動することが必要だ。それは、一方ではコミュニティの人びとの相互依存を高度化しつつ、他方で、遠方の無名の力で動かされる市場による支配を覆し、それによって自身の市場への依存を断ち切るプロセスであるだろう。
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日本のメディアは街頭での抗議行動や劇的な反乱さえ十分には報道しないけれども、それはともかくとして、「コミュニティの集合性を破壊する日常生活に根差した問題に取り組むことで、人びとの間に有機的関係を発展させるプロセスを起動することが必要だ」という指摘は重要だと思う。
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