『すべての経済はバブルに通じる』読書メモ

売れているらしいこの本。

この類の本はあまり手にすることはなかったのだが、


でのHumaさんとのやり取りの中で、読んでみることにした。


借りることが可能な地元の図書館全体で7冊もあるのに7人待ちという状況だった。



現状の資本主義をキャンサー・キャピタリズムと呼ぶ著者。

やっぱり資本主義は末期癌なのだということを実感させる話だ。


「プロの投資家であればあるほどバブルを探し歩き、あるいは自分でバブルを作り、そして膨らませて、そのバブルに最大限乗ろうとするのである。したがって、金融市場の参加者がプロの投資家であればあるほど、バブルは頻繁に起こり、そして激しく膨らみ、最後には崩壊して、金融市場の傷は深くなるのである」(211p)という指摘はとても興味深い。


じゃあ、やめなくちゃしょうがないじゃないかと思う。

どう考えてもおかしい、この破滅に向かうレースを続ける必要はないはず。


リスクテイクバブルに表現されるがんの資本主義は破滅につながっていると書いている著者が投資を続け、それを促し、投資術を売り物にしているのが理解できない。


そして、彼はこの癌の資本主義が21世紀を席巻するという。「そんなの早くやめさせろよ」とぼくは単純に考えるのだが、どうしてそれは早期に終わらないと考えるのか、そこの説明はない。そこに現状に介入し、変化させようという意思は感じられない。


以下のように書いている。

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 21世紀においては、キャンサーキャピタリズムが形を変え、品を変え、次々と発症するだろう。その発症がわかっていても、それは社会的に制御できるものではなく、金融資本が自己増殖を続ける限り、それは止まらないであろう。 241p

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だったら、金融資本の自己増殖を止めればいいじゃないかと思う。お金がお金を生み出すというシステムを変えるしかないのではないか。

ここを変えない限り、地球の破滅的な状況は変らないのではないかと思う。一方での飽食と、他方での飢え、そして生存の危機という状況にぼくたちはいつまで手をこまねいていなければならないのかと思う。


というような感想を抱きながら、読み続けていたら、いちばん最後でこんな風に書いている。

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 キャンサーキャピタリズムの完治はいつか。それは意外と遠いようで近い気もする。しかし、それまでには、これまで以上の激痛と悶絶を経なければならないだろう。少なくともその覚悟だけは、我々は今からしておかなければならない。

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それを終わらせなければならないという感じはあるのだが、どうしてこんなに受動的なのだろうと思う。



以下は蛇足。「世界で起きている金融危機はサブプライムとは関係なく、リスクテイクバブルの崩壊なのである」(61p)と著者は書くのだが、関係ないっていうのはいくらなんでも言いすぎじゃないかと思う。サブプライムローン債権が彼が呼ぶところのリスクテイクバブルをもっとも象徴的に表現していたのだから。



この記事へのコメント

山路 独
2009年04月30日 05:09
目指すべきは、人権の拡充=生存権の確立です。
tu-ta
2009年04月30日 08:39
山路さま
コメントありがとうございます。
生存権、つまり生き延びる権利ですよね。
その通りだと思います。

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