『概説 障害者差別解消法』メモ(ちょっと追記あり)

4月19日の朝、公開したのだけど21日2:30AMにちょっとだけ追記

版元の法律文化社のHPは
http://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03600-1
ここで、詳しい目次や「はしがき」、著者紹介が読める。
さっき、著者をタイプした後で、気がついた。


読書メーターに直後に書いたこと
石川准さんが合理的配慮を拡大解釈している人が多いとツイートしていて、その解説にこの本を推奨していました。 合理的配慮は基本的に障害者の申し出が前提ということをぼくもちゃんと理解できていませんでした。 法律の解説として、必要な本だと思いました。

~~~
衆議院付帯決議(同内容が参議院付帯決議にも)には
また、意思の表明について、障害者本人が自ら意思を表明することが困難な場合にはその家族等が本人を補佐して行うことも可能であることを周知すること
とあります。http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_ref1.html


この本とあわせて、以下のHPの情報も読むとよりわかりやすいかも。
内閣府の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」関連情報のHP 
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html
ここに入っているのは以下
~~~~~
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(HTML形式)
(PDF形式:135KB) テキスト(TXT形式:14KB)

概要(PDF形式:237KB)
概要(るびあり)(PDF形式:245KB)
テキスト(TXT形式:2KB)

参考1(衆/参・内閣委員会における法案に対する附帯決議)

参考2(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律Q&A集<地方公共団体向け>)

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>

障害者差別解消法が制定されました(広報用リーフレット)
計4ページ(PDF形式)(1pずつしかDLできないのが不便)
テキスト(TXT形式:7KB)

わかりやすい版
表紙(PDF形式:400KB)
見開き(PDF形式:577KB)
裏表紙(PDF形式:400KB)
テキスト(TXT形式:4KB)

~~~~~
ほかに
障害者差別解消支援地域協議会の在り方検討会の議事録や平成25年3月のパブリックコメント、
「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見(平成24年9月障害者政策委員会差別禁止部会)などにもリンクしている。

ちなみに、JDF作成のリーフレットは以下
http://www.normanet.ne.jp/~jdf/pdf/sabetsukaisyohou2.pdf
こっちはわかりやすいけれども、合理的配慮に関して「障害のある方などから何らかの配慮を求める意思の表明があった場合」という説明が抜けている。
また、この法律の対象分野は?という項目で、いろいろ列記してあるんだけど、「雇用・就労」は例にあげられていない。確かに、ここは微妙な部分が多いんだけど、とりあえず例に入れてほしかった。(と思ったら、よく読んでみたら、雇用に関しては障害者雇用促進法に差別禁止規定が入っていて、より具体的に規定されていた。(詳しくは法の13条のところで)


以下、読書メモ



日身連事務局長 JDF政策委員長 森祐司さんがあげている課題(概要)
1、内閣府がつくる基本方針や各省庁でつくる差別や合理的配慮のガイドラインに当事者の声を反映させる
2、施行3年後の見直しで合理的配慮義務を事業者に広げる。
3、間接差別などのあらゆる差別が解釈できる別の定義を置くこと。そのための事例収集。
4、個別分野の規定(各則)を、事例を集め実現すること
5、紛争解決の仕組みの充実。(部会意見などを参考に、差別解消法独自の機関をつくる
6、差別をなくす取り組みとして、各自治体で相談や斡旋の仕組みを持つ条例づくりを進める。20p




議員鼎談では司会が毎日の野沢和弘さんで、衛藤(自民党)、高木(公明党)、中根(民主党)によって、3党合意が持ち上げられている。確かにそれで法律が成立したという側面は否めないのだが、それはどうなのだろう、という疑問は残った。自立支援法のすごく中途半端な改訂も、この構造のなかで行われたのではないか。

ただ「閣法」という形はとったものの、実質は議員立法だったという指摘は押さえておくべきかも。


この著者は「障害者差別解消法解説編集委員会」となっており、特定の個人の文章ではない。
そのことについて「あとがき」には以下のように記載されている。
あえて言わせていただくなら、本書は法律の立案に関わりの深かった人間を中心に執筆している。また、本書が法律の解説であることから、制定の経緯や逐条解説を盛り込んでいるのは当然として、本法が閣法でありながら実質的には議員立法であることにも鑑み、関係が深かった国会議員による鼎談を入れさせていただいた。161p
とのこと

ちなみに障害者差別解消法解説編集委員会」の委員は以下
(法律文化社のサイトに詳しく掲載されてたのをタイプした後で気がついた)
国会関係
江田五月(民主)
衛藤セイイチ(自民)
高木美智代(公明)
中根康浩(民主)
福岡資麿(自民)
山本博司(公明)

行政関係
伊奈川秀和(厚労省中四国厚生局長)
難波吉雄(環境省大気環境課長)
牧野将宏(内閣府政策統括官付参事官付参事官補佐)
山崎史郎(消費者庁次長)
吉田理子(内閣府日本学術会議事務局企画課課長補佐)

おそらく実体としては後者の人を中心に執筆されたのではないかと思う。あくまで推測だけど。

そういう面では、批判的なつっこみがほしいと、物足りない部分もあったが、とりあえず、どんな法律か知るために、このような概説は必要とされていたのだろう。

あと、委員会メンバー以外の協力者として
石川准さん、尾上さんの他に鼎談の司会の野沢さん、先に引用した日身連の森さん、育成会の田中さんの名前があがっている。



で、この本の肝は第4章「障害者差別解消法の解説」
この本の価値はここにあると思う。で、以下

~~~~~

第4章「障害者差別解消法の解説」



第1条に目的が置かれた理由として、閣法なので、慣例で全文をおかなかったので、そこに目的趣旨を最大限盛り込んだとしてある。67p

また、この法律の基本的枠組みとして、民事法的アプローチでも刑事法的アプローチでもなく、行政法的アプローチを基本としている、と記載されている。
68p


この法律の第5条は
「社会的障壁の除去についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備」についての条文。
ここの趣旨説明で注目したのが、「個別具体的な場面で行われている合理的配慮」と分けて、不特定多数の障害者を主な対象として行われる「事前的改善措置」について規定しているということ。「事前的改善措置」は障害を理由とする差別の解消に向けた「環境の整備」として位置づけられ、バリアフリー法等により、その推進を図ることとしている、とこの条文の「趣旨」の欄に記載されているが、素人には条文からはそのあたりのことを読み取ることはできない。

あと、「解説」には、その「環境整備」のなかにハードだけでなく、研修などのソフト面での対応も含まれるとあり、これは条文にも明記されている。問題は、この法律の理解のために、どんな研修が行われるか、ということだと思う。ぜひ、DET(障害平等研修)を活用してほしい。
75p

不思議なのは、この本でもJDFのパンフレットでも対象分野について触れているのだが、条文には対象分野についての記載はない。つまり、どんな分野でも適応しうると見るのが、普通だと思う。とはいうものの、わかりやすさのために提示しているのだろう。そのために、微妙な部分の多い雇用・就労についてはこの本でもJDFのパンフレットでも対象分野の例として記載されていない。以上のパラグラスはこの本を全部読み返す前に書いたもの。さっきも書いたけど、よく読むと法の13条のところに書いてある。読んだはずなのにノーチェック。


また、基本方針に関する第6条の解説はけっこう詳しいのだが、結語部分に以下のように書かれている。
・・・何が差別に当たり得るのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのか。といった具体的内容については、基本方針に即して作成される国や地方公共団体等の対応要領及び主務大臣の対応方針ににより明らかにすることとすることとしている。79p
とある。国のHPの国民向けQ&Aには、基本方針は「遅くとも、平成25年度のうちに定める予定です」とあるのだが、まだ出ていない(と思う。4月18日現在、追記、長瀬さんに聞いたのだが、政策委員会でのヒアリングが終わっていないとか。)

第7条は行政機関などの合理的配慮の提供義務規定。
この解説にも
・・・社会的障壁の除去を必要とする旨の「意思の表明」があった場合に個別に行われるものである。これは、配慮が求められている相手方から見て、当該者が障害者なのか、配慮を必要としているか否かが分からない場合まで、具体的な配慮を義務付けることが困難なためである。82p
とある。同時に意思の表明がなくても、機関が自主的に適切な配慮を行うことは望ましい、と記載されている。まぁ、当然といえば当然だが、障害者側からの申し出がなければ提供義務が生じない、という部分がポイント。提供されていないということをめぐって、行政機関などと争うことが予想される場合、すでに申し入れてあるという証拠を残すことも必要になってくるかもしれない。

そして、過度な負担を伴わない場合、という部分も微妙で、このあたりが「基本方針に即して作成される国や地方公共団体等の対応要領及び主務大臣の対応方針」でどの程度書き込まれるかが問題になってくるだろう。

第8条は事業者への努力義務規定で、7条とほぼ同じ内容が、事業者には努力義務として規定されている。

(9条、10条、11条は国の機関や地方公共団体が対応要領や対応指針を定めることの規定)


そして、この第8条の努力義務に実効性をもたせるために12条の規定があり、「当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導、若しくは勧告をすることができる」とある。
これが、どの程度の強制力を持つか、というところが気になるところだが、この本の解説によると、これらは「法的拘束力を伴う改善命令」や「社会的制裁としての公表」よりも「比較的緩やかなもの(非権力的な行政指導)に限定されている」としている。この強制力のなさが、森祐司さんがあげている課題の「2」となる。


13条が雇用・就労に関する規定だった。(やっとでてきた)

ここで、雇用や就労に関して、差別を解消するための措置は障害者雇用促進法に規定する、としている。だから、それが、この法律の対象のリストからはずされていたのだろう。
この本の条文の解説には記載されていないが、内閣府のQ&A<地方公共団体向け>」には以下のように記載されている。
問7-1-2
雇用分野については、本法の対象分野には含まれるものの、今国会で成立した障害者の雇用の促進に関する法律の改正法において、差別の禁止等の具体的な措置が定められることから、本法第3章に規定する差別の解消のための具体的な措置については、障害者雇用促進法の定めるところによることとしている。

というわけなので、そのあたりの説明をJDFのリーフやこの本の「法の対象」を説明したところでも、入れて欲しかった。


14条から20条の第4章は「障害を理由とする差別を解消するための支援措置」

14条では障害者差別に関する「相談に的確に応じ」、その「紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする」と規定されている。
これが具体的にどうなるかだが、この本の「趣旨」(説明)にはこんな風に書かれている。
障害者からの相談や紛争解決については、内容に応じて様々な制度(行政相談や人権相談)が対応していて、基本的には既存の機関を活用し、その充実を図る

としている。障害者に一番身近なのは福祉事務所だと思うのだが、そのあたりの体制をどう作るかというのは課題になってくるだろう。大田区では障害者総合サポートセンター(仮称)の相談部門などが対象になりそうな気がするが、地域の障害者からすれば、もう少し身近にある地域の福祉事務所で対応してほしいということになるかもしれない。

15条は啓発に関する規定で、解説では【啓発活動の具体的内容については「基本方針」にその基本的事項を盛り込むことが想定されている】、とある。95p

啓発に関してはDETとの関連もあるので、調べてみた。
内閣府のHPから引っ張った情報

法律本文
(啓発活動)
第十五条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。



公共団体向けのQ&Aの該当部分
問15-5 第15条(啓発活動)の趣旨如何。

(答)
障害を理由とする差別の解消を効果的に推進していくためには、国民各層の関心を高め、その理解を協力の下に推進することが重要であることから、国及び地方公共団体において、必要な啓発活動を行うこととしている。

問15-6 「障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因」について、政府としては具体的にどのようなものを考えているのか。

(答)
障害を理由とする差別については、国民一人一人の障害に対する知識の不足、障害者に対する意識の偏りに起因する面も大きいと考えている。このため、こうした差別のない社会を実現するための妨げとなるような諸要因を解消するためにも、啓発活動が極めて重要であると考えており、今回の法律の施行を通じ、障害に対する正しい知識の普及、障害者に対する国民の意識啓発等に取り組んで参りたいと考えている。

問15-7 啓発活動の具体的な内容や進め方如何。

(答)
啓発活動の例としては、例えば、本法の趣旨や内容について周知徹底を図るためのパンフレットやポスター等の作成・配布、説明会やシンポジウム等の開催等が考えられる。
本規定を踏まえた啓発活動の具体的な内容については、第6条に基づく基本方針に基本的な事項を盛り込むとともに、実施に当たっては、関係省庁や地方公共団体とも連携して取り組んでまいりたい。

~~~~


17条は差別解消支援地域協議会についての規定
この協議会の趣旨についても公共団体向けのQ&Aが詳しい。
この本では協議会を組織することで、【いわゆる「制度の谷間」や「たらい回し」が生じることなく、地域全体として障害を理由とする差別の解消に向けた取組が行われることが期待されている】と書かれている。98p

第4章「障害者差別解消法の解説」のメモはここまで

133pからは障害者雇用促進法のなかの差別解消に関すて該当する条文が掲載されている。


内閣府のHPとあわせて読んで、この法律のことがだいたいわかったような気分になった。
(ここで大事なのは、「気分になった」だけ、ということ。言うまでもないけど)

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