『社会はこうやって変える!』ことができるかな?その3(ほんの紹介43回目)
(中途半端だけど、「ほんの紹介」はここで終わり。
『社会はこうやって変える!』メモ1(本の紹介と、翻訳者による「本書の読み方」までのメモ)
https://tu-ta.seesaa.net/article/202106article_5.html
『社会はこうやって変える!』メモ2(序章と1章のメモ)
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この本では、なぜ自己利益が重要なのかということについて、以下のように説明されている。
誰かの利益と全く乖離した抽象的な公益など存在しない・・・誰かの個人的で具体的な利益、それは安全に暮らしたい、家族をちゃんと食べさせていきたいという欲求かもしれないが、そうした多くの人々の具体的な自己利益の共通部分を紡ぎ出していくことからしか、公共的な利益は立ち上がらないのである。(ⅵ)
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宗教やエスニシティが違っても、経験や感情の共有から、つながることのできる「のりしろ」を発見できる。この「のりしろ」こそが、共有された自己利益であり、人々が当事者性を以って、正に自分ごととして社会運動にコミットしていくエネルギーを生み出す基盤となるのである。(ⅶ)
もっと簡単に描けば、「**という(多くは社会運動的な)行動が自分の利益につながる」ということが理解できたとき、人は行動するという話。その自己の利益が重なる部分を見出し、重なる人たちを組織して広がりを作り、決定に影響力を発揮できる人を見つけ、その人が影響力を行使するしかない状況を作り、実際の社会を変えていくことをコミュニティ・オーガナイズと呼んでいいのだと思う。また、それだけでなく、自分たちだけで出来ることを行って、そのコミュニティに変化を生み出し、それを広げていくという場合もあるだろう。 それを動かす原動力が自己利益だとこの本には書かれている。
この本の事例の一つは大学での生活賃金キャンペーンの経験。大学の清掃をしている移民の労働者、当時、最低賃金程度の時給5.35ポンドだったとのこと(1ポンド145円で計算すると776円程度だが、この原著が書かれたのは2018年でこの事例はさらに昔)。以下、要約。
1,当事者に声をかけ、顔見知りになり、話ができる関係を作り、事情を聴く。
2,状況を知れば知るほど、怒りがこみ上げ、副学長に状況についての長い手紙を書く。しかし、反応はない。
3,状況を説明してくれた人が電話に出なくなる。著者と話しているところを見られ、クビと脅されただけでなく、入管に報告するとも脅されていた(彼は正式なビザを持ってなかった)。
4,大学で30年働いている女性を紹介してくれた。
5,キャンペーンの会合に最初は10人、次に15人が参加。
6,従業員の削減や設備の老朽化などの情報を集める。
7、連携相手を探し、会いに行く。大学の研究者、学生自治会の代表、労働組合支部書記長を会合に招き、キャンペーンに参加。
8,副学長あて、ビデオレター作成。大学以外のコミュニティのインタビュー。大学の評判に傷がつくかもしれない「問題のある記録書類」も添付。
9,大学側から契約している清掃会社の問題であるとの返答。
10,評議員会の日にデモ。先頭に年配のシスター。後ろに100人くらい。みんなでモップをもって談笑しながらゆっくり歩く。大学側は過剰反応。犬を連れた警備員を配備。地方紙が写真付きの記事を掲載。「シスターでも誰でも入れない」との見出し。
11,副学長と財務責任者と会って話す。大学上層部は劣悪な状況を知って驚いていた。
12,大学は下請け会社との契約を止めて、直雇いにし、生活賃金や年金を保障。
とりあえず紹介はここまで。
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