経済成長なしで最低賃金2000円は可能なのか?
「2022年7月17日、第33回サマーセミナー2022・斎藤幸平氏「撤退戦としての脱成長」感想と質問
後藤 陽司
本日7月17日、第33回・愛知サマーセミナー2022@東邦高校に参加して、斎藤幸平さんの講演「撤退戦としての脱成長」を聞きました。
斎藤さんの話はちょうど1年前の昨年7月18日にも聞いたが、脱成長コミュニズムへの展望において、本日は若い高校生やZ世代も参加する企画なので、「ジェネレーション・レフト」という切り口から、欧米における若者世代の左傾化、社会主義志向も含んだ左翼支持の増大が語られました。例えば、アメリカ大統領選挙におけるサンダース現象や、イギリスにおける労働党首コービン誕生など。対する日本はそうなっていない、世代間対立もあるかもしれない、反原発運動や、SEALDsも敗北している。しかし、我々高齢世代こそが自ら「Z世代」のような「ジェネレーション・レフト」になり、2050年の脱炭素社会実現に向かってたちあがり、たたかっていかなければならないという主張は大いに首肯できました。
質疑応答の時間もありましたが、挙手が一瞬出遅れたか、時間切れでわたしは質問することが出来ませんでした。
聞きたい事はいくつかありましたが、その中のずっと気になっていること、わたしのリアルでもフェイスブックでも友達の人が常々言っていること。斎藤幸平さんは、資本主義的私的所有を転換させて、社会的共通資本とも言うべき、大地、地球そのものを念頭に置いた「コモン」を再生させる事を通じて、資本主義的経済成長主義から「撤退」して脱成長を実現する、と主張し、それと関わって、ジェンダー平等や労働組合などでの民主主義の再生の問題も重要だと話しました。わたしとしては、昨年もそうした事を斎藤さんから聞いたが、脱成長とそれらの課題との連関が今一歩具体的なイメージなり論理が分かりません。例えば現在、新自由主義の亢進の下での貧困と格差の拡大、現下の物価高騰などに対して最低賃金の全国一律制1500円以上への引き上げの要求と運動が労働組合運動の諸潮流から湧き起こって全国化し、先の参議院選挙でも野党各党が最賃1500円を政策に掲げました。わたしなどはこの19日にでも愛知地方最低賃金審議会に出すばかりの意見書には、最賃は将来的には時給2000円への引き上げを、と書いています。そしてくだんの人は、このような最賃大幅引き上げは、必ず経済成長を必要、前提とするから、脱炭素社会への移行には逆行すると主張しています。こうした主張にどう反論すればいいのでしょうか。
なんとなく、この人は、賃上げには成長が必要という、安倍元首相や岸田首相のような「成長なくして分配なし」の論理をドグマ化している印象があり、成長なくても、儲けすぎの大企業の内部留保への課税、大企業への法人税の復活強化や大企業・富裕層への強度の累進性の所得税の復活強化という税金の集め方と、軍事費の削減など、更に全労連が提言としてまとめているような賃上げ体力に欠ける中小企業への支援策の抜本的新設・強化策などの税金の使い方を変える事で、たとえ人口減少や脱成長下でも賃上げ、最低賃金引き上げは可能とも考えますが、斎藤幸平さんの考えはどうか、聞きたかったです。
齋藤さんへの批判としては、労働者階級の政治権力の掌握の問題、つまり政治闘争の問題が欠落しているということがよくなされます。
が、本日斎藤さんは、従来からの労働者・市民による「下からのアソシエーション」形成の運動をやはり語られていたし、気候学者の江守正多氏が三十年前に気候問題を研究していた時、誰も無視して問題が手遅れになると思っていたと斎藤さんに語ったそうだが、斎藤さんは、こんにち気候危機は世界的な課題となり、スペインの統一左翼の党首で左翼連立政権に入閣している政治家が、脱成長など自分と同じような主張をしていることに希望を感じると締めくくっていました。「ジェネレーション・レフト」を話題にしているように、つまり政治的変革闘争も十分に考えている印象でした。
この感想へのぼくからの返信
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後藤さん、みなさん
経済成長なしで最低賃金2000円は可能なのか?
また、この件について、後藤さんがどう考えているか、
ちなみに最低賃金2000円で1日7時間 月に22日働いて年収は3,696,000です。確かに、
この金額の暮らしで、CO2が本当に増えるかどうか、疑問です。
そして、他方で年収が1千万円以上の人も少なくありません。
脱成長への社会的認知があれば、
また、福祉系の労働者の賃金が安いのは政策の問題です。
後藤さんの問題提起でそんなことを考えました。
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