フェイスブックでの労働者協同組合をめぐるやりとり再掲

河添さんとフェイスブックで労働者協同組合をめぐるやりとりがあり、記憶に残すために再掲。2023年1月、空白行を挿入し、わかりにくいところ赤字で加筆
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河添 誠
私のフェイスブック投稿を読んだ、ある研究者の方から「河添さんと電話で話したい」とメッセージが来たので、「投稿の主張は間違っている」とか言われるんじゃないかとビビっていた。が、「河添さんの投稿と同意見だ」ということで、しばし、労働者協同組合法の礼賛は問題だと意見交換した笑。よかった笑

鶴田 雅英
労働者協同組合について、ぼくは興味深いし、意味のある取り組みだと思うのですが、職場における民主主義をどう実現するか、そこにとても困難なチャレンジがあり、だからこそ興味深いと思っています。

にもかかわらず、そこのところの議論が抜け落ちていることの多い「労働者協同組合法の礼賛は問題」だとも思います。

職場を形成するうえで、どうしても指示系統は必要だし、それがヒエラルキー構造を生みがちです。また、ワーカーズを運営する上部組織の専従の賃金をどう生み出すか、という課題も。そのうえで、職場内における民主主義をどう確立し、すべての構成員が平等に話し合える環境を形成することが求められているのですが、民主主義は時間がかかり、面倒でもあります。そこをどう克服するか。運営をめぐる会議に参加するモチベーションをどう形成するかという話でもあります。

そして、有名な労働者協同組合では、価格競争で仕事を取りに行き、公共の仕事を安くやらされているという現状も問題でしょう。そんな条件で獲得した現場の労働条件では労働者協同組合という組織が働く者のモチベーションにつながりにくいはずです。

他方で、労働者協同組合だからこそ、公共の仕事を直営にせずに、外に出すとき、ディーセントな労働条件を保証できるような費用を公に要求できるという可能性もあるのではないかと思います。営利企業ではできない「価格競争で底辺にに向かう競争にしてはいけないと声を上げる」ということの可能性も残しているのではと思うのです。(出来ているところがあるかどうかは知りませんが)
いまある労働者協同組合には、そのあたりの苦闘や模索をもっと表面に出してほしいと思っています。

河添 誠
労働組合がかなり強くチェックしない限り、労働者協同組合だろうが株式会社だろうが労働条件が安定して改善することはありえません。その議論が欠け落ちていると思いますね。労働者協同組合をめぐる研究者や活動家の議論では。あまりにも当たり前のことなのですが。議論の欠落が大きすぎるので、礼賛の問題を繰り返し私は指摘せざるを得ません。東京新聞をはじめ、メディアも含めて勉強不足、取材不足ですね。

河添 誠 
労働者協同組合が「好き」な人は、こういうものを読んで考えていない人が多い傾向があります。危険な側面を指摘している人たちが納得できるように議論を展開してほしいと思います。  労働者協同組合法案についての声明 | 日本労働弁護団 https://roudou-bengodan.org/proposal/%e5%8a%b4%e5%83%8d%e8%80%85%e5%8d%94%e5%90%8c%e7%b5%84%e5%90%88%e6%b3%95%e6%a1%88%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e3%81%ae%e5%a3%b0%e6%98%8e/

河添 誠
むかし、「原発は安全」と言い続けていた「原子力ムラ」と同じように、「労働者協同組合ムラ」ができていないか危惧します。

鶴田 雅英
イタリアでは日本の障害者事業所に当たるような場所が労働者協同組合として運営されているとのこと。
映画『人生ここにあり』でも描かれていました。
どのように、このあたりのことが意識されているのか、詳しい人に聞いてみたいところです。

河添 誠
その映画は観ました。もちろん、推進している人たちは、意識しているでしょう。ですが、巨大に展開しているメインの事業は、自治体から請け負った公園やビルの清掃業務などです。そこの労働条件は劣悪で、労働条件も請負単価の切り下げを「みんなで決めている」という体裁の下に受け入れさせる労働条件切り下げシステムとして労働者協同組合は機能させ続けてきました。それが法的に承認されてしまった。ですので、労働組合が突き上げない限り、ますます悪くなるでしょうね。法制化で。

鶴田 雅英
現状の課題は河添さんが書いている通りで、自治体から請け負った公園やビルの清掃業務を価格競争で安く請け負うことが多くて、ダメじゃんというのはぼくも感じています。
そこを変える努力をしているようにも外からは見えません。
しかし、同時にだから可能性がないというのではなく、自律した職場をどう形成できるのか、ということは未来の可能性を考えるうえでとても大切な視点だと思っています。
また、労働組合運動があれば、改善出来るとも楽観はできないようにも思います。労働組合内部でも民主主義がまったく機能していないところが多いように感じています。
なのでぼくは、課題は組織内における民主主義をどのように形成しうるか、どうしたら、民主主義という少しやっかいなものにみんなが参加しようと思えるか、そのあたりにあるのではないかと思うのです。

河添 誠
可能性があるとかないとかそういうことを言っていません。労働者協同組合の実践だけで労働者の労働条件が改善されることは「絶対にない」と断じることが重要で、そのうえで労働組合のあり方を論じるべきです。これは株式会社に雇用されて働く労働者の労働条件の改善の問題と同じだということです。

河添 誠
この当たり前のハナシを回避する傾向が労働者協同組合をロマンチックに語る人たちに存在する「傾向」で、これを「礼賛」と呼んでいます。

河添 誠
職場をどんなに民主主義的に運営しようがダメなのです。それでも労働組合が決定的に重要という主張をするかどうかですね。労働組合ぬきに職場の民主主義的運営が株式会社とは異なる形で労働者協同組合では可能になるのでという論理で、労働者協同組合が労働組合をつぶしてきたのが、これまでの歴史ですから。

鶴田 雅英 
ぼくの言い分を逆に考えると、労働組合でさえ、民主主義を貫徹させるのがこんなに困難なのに、どうして仕事をする場所でもある労働者協同組合で、どのように民主主義を形成できるのか、という話でもあるのかと、河添さんとやりとりをしていて、感じたのでした。

河添 誠
そのことは大切なので、試行錯誤、研究、実践の積み重ねやっていただければいいことです。ですが、「礼賛」問題については、私の指摘は妥当だと考えます。

鶴田 雅英
おっしゃる通り、このあたりの問題を抜きに「礼賛」は間違ってますね。
同時に労働者協同組合で受注した公の仕事の場合、契約主体としての労働者協同組合は契約してしまったのだから、公に対して、文句は言いにくいものの、そこの労働組合であれば、労働者協同組合で財政をガラス張りにして、契約の費用の安さを元受けに対して、指摘し、安定した雇用を求めることが、株式会社の場合よりも可能性があるかもしれない、とも思いました。

河添 誠
労働者協同組合だから労働条件が悪くなるとかよくなるとかという可能性はあまりないと思います。資本主義的な市場経済の中で競争するしか存在できないからです。そちらの強制力の方が圧倒的に強い。農業協同組合や生協の労働条件がいいかというとそんなことはないというのと同じことです。ですから、現場の運動次第です。いずれも。あまり制度論で語らない方がいいかもしれません。

河添 誠
労働者協同組合をめぐる議論は、かつての1980年代くらいまでの社会主義国をめぐる議論と似ているなと思っています。「いろいろ問題があるけれど可能性があるのだ」と強調して擁護する人がそれなりにいて、社会主義国に対する批判や警戒を述べると「可能性」で反論されるという苦笑。制度や体制をロマンチックに語るというクセは、もう放棄した方がいいと思うんですけどね。

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上記のやりとりは
https://www.facebook.com/makoto.kawazoe.5/posts/pfbid02ap1D1MiKxFaJSLrXH31XQpFdQ8LcyNiRFrThG5F9HaxQhhD4fuQjpGDsY4UbL3GLl?comment_id=439530448169116&reply_comment_id=1572459379837364&notif_id=1664885659264149&notif_t=feed_comment_reply&ref=notif
に掲載されています。
ここでは許可を得た河添さんとのやりとりしか掲載していませんが、そこには他の方の意見も掲載されています。

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