NHK・ETV特集『鍵をあける 虐待からの再出発』について

NHKEテレで放映された中井やまゆり園に関する以下の番組
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鍵をあける 虐待からの再出発
初回放送日: 2023年8月12日
再放送;8月17日(木) 午前0:00 〜 午前1:00
ご覧になったかたも多いと思います。

上記のサイトの番組紹介は以下の通りです。
知的障害者施設の元職員が入所者19人を殺害した相模原障害者殺傷事件から7年。その後、神奈川県がすべての県立の入所施設を調査したところ、虐待や不適切な行為が次々と発覚した。県立中井やまゆり園では、自傷や他害など強度行動障害が見られる入所者の長時間にわたる居室施錠も数多く報告された。鍵を開き、一人ひとりの入所者たちと向き合う。模索しながら新たな暮らしをつくろうとする2年間を記録した。

この話については、神奈川新聞の成田記者の連載記事
 (こちらは有料ですが、読めます。
  連載「やまゆり園事件は問う 中井園の模索」まとめ
で知っていましたが、やはり映像のインパクトはあります。

この番組についてのフェイスブックで少しだけ黒岩神奈川県知事とやりとりがありました。時系列で紹介します。長いです。

まず、知り合いの平岡さんが批判的に紹介しているのを見て、ぼくは知ったのですが、
黒岩知事がこの番組を下のようにフェイスブックで紹介していました。
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12日放送のNHKETV特集「鍵をあける〜虐待からの再出発」
虐待事案が続々と明らかになった県直営の障害者施設、中井やまゆり園での改革のプロセスを二年間にわたって記録したドキュメント。
津久井やまゆり園事件から始まった再生への取組の結果、成立した「当事者目線の障害福祉推進条例」。それを実際の形にできるかどうかが、知事4期目の私の最大の課題のひとつでした。
それまで、暴れて危険だからと言って、外カギで部屋に閉じ込められていた利用者が、当事者目線の支援により、地域での自立した生活に移行していけそうなくらいのレベルにまで改善していっている様子が、見事に映像に記録されていました。
改革が確実に進んでいることは間違いありません。ただ、これは外部人材も入った改革プロジェクトチームの成果であって、彼らが去った後も、継続できるようになるかどうかがこれからのカギになると思います
これが成功すれば、日本の障害福祉のモデルになるに違いありません。福祉関係者全員に見てもらいたい番組でした。
ちなみにNHKプラス同時 /1週間見逃し 配信もありますが再放送も予定されています。
(以下略)


平岡さんがこの知事の紹介をシェアしたときのコメントは以下
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他人事感満載の投稿。
職員の負担増など具体的なことは黒岩知事の手腕にかかっている事が示されてはいない。
~~https://www.facebook.com/yuji.hiraoka.9/posts/pfbid0Fm5jQ4HsxSbKUNRzDyidfDa36uKx9onWWkUSZGXM6oTQ2fvY2S4r4tgyNqrC82cLl

そして、知り合いの猿渡さんもこの知事の紹介をシェアしていたので、平岡さんの他人事という指摘に触発されて、ぼくが書いた知事批判のコメントに知事から返信がありました。以下、紹介します。
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鶴田 雅英
いい番組だったと思いました。入所施設をどんどん通過施設にしていくことが求められ、将来的には入所施設を通過しなくても誰もが地域で暮らすことが求められているのだと思います。
しかし、シェア元の黒岩知事のコメントはどうでしょう?
あの番組で印象的だった場面の一つは所長が率直にいままで閉じ込めていた人に詫びていたシーンでした。黒岩知事の努力も確かにあったとは思うのですが、あの所長の努力と比べてどうでしょう?
最高責任者として、これまで、閉じ込めてきたみんなに、まず詫びるべきではないかと、ぼくは思いました。


黒岩 祐治
鶴田 雅英 番組では放送されませんでしたが、私自身、先日、中井やまゆり園に伺い、利用者のみなさん全員に一人一人、直接お詫びをしてきました。二度と、あんな嫌な思いをすることのない施設に変えていくからねとお約束してきました。
ていねいな返信、ありがとうございました。お詫びされていることを知らず、失礼なことを書いてしまったことをお詫びします。
ただ、できれば、フェイスブックの番組紹介でも、そのことに触れていただければと感じたのでした。


鶴田 雅英
追記します。
この番組、多くの人に見て欲しいと思いました。
自らが出来ていなかったことを正直に認め、それを公開出来たこと、当たり前のようですが、これがなかなか出来ない事業所は多いのです。自らの失敗を棚に上げ、対話を拒否する事業所。他人ごとではありません。自分が働いている場所がどうなのかが問われます。

中井やまゆり園で、それをしっかりオープンにできたということは素晴らしいと思います。
もちろん、同時に、どうしてそれまで、そんなひどいことが行われ、許されてきたのかということも忘れてはならないでしょう。

そして、思うのです。津久井やまゆり園ではどうだったのだろうと。
津久井やまゆり園でも中井やまゆり園で最近まで行われていたような「閉じ込め」、入所者とのコミュニケーションへのあきらめが行われていたのではないかと疑ってしまうのです。

しかし、津久井やまゆり園での支援の実態は外にはほとんど報じられません。かつてはどうだったのか、いまはどうなっているのか。
想像してしまうのは、閉じ込めが常態化してしまうような人権を無視した支援を目にしたU死刑囚が、「殺す」という選択肢を選んだのではないかということ。

こここそが、津久井やまゆり園事件で解明しなければならない大きなポイントではないかと思うのでした。

中井やまゆり園のこの変化は素晴らしいと思います。しかし、それを中井だけで終わらせてはいけないはずです。神奈川県全体で、そして、全国で、このような閉じ込め・コミュニケーションへのあきらめと拒否が続いていないか、そこに改革のメスを入れることが出来るのかが問われていると思うのでした。

入所施設を終の棲家にしないこと、誰もが地域で、障害のない同年代と同様に住み続けるために、何が必要で、何をしなければならないのか、出来ることは明確になりつつあるようにも思います。自分の地域で何が出来るかが問われています。
この中井の例も参考になるはずです。そして、それだけでなく、そこにいる人たちが、どのような暮らしを選択できるかが問われていると思うのです。選択肢はグループホームだけでなく、重度訪問介護を使った介護付きの一人暮らしの選択肢も広がって欲しいと思っています。
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ここに、もうふたつ書きました。

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番組で虐待に関わった人の処分の内容も明らかにされていました。
で、わからなかったのですが、ここで処分されたのは現場の人だけなのでしょうか?
県の障害福祉部局や、それを監督する責任のある人たちは処分を免れているのでしょうか
そのことは聞いてみたいと思いました。
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追記
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この処分については県のHPに公開されているのを教えてもらいました。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/s6d/prs/r4059450.html
これを見ると、現場で処分されたのは所長だけ。実行者には処分はなし。
最後にこんな話も掲載されています。
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4 特別職の監督責任等

(1)知 事

 令和5年第2回定例会に、給料の減額のための条例改正を提案予定

(2)副知事

 知事の監督責任等を踏まえ給料の自主返納を検討
~~追記ここまで~~




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たびたびすみません。
書き忘れました。

猿渡さんが紹介文で以下のように書いていました。(部分のみ)
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小さいころから一緒にいても
家族の中にいても、向き合えなくなる。
家族は施設しかない、地域で生きられないと
でも、コミュニケーションをとっていけば…
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ここ大事なところだと思いました、

忘れてはいけないのは、本人が希望しないのに、2023年の今でも、親の支援がなくなって、生まれ育った地域から遠く離れた入所施設やGHを選ばざるを得ないという現実があるということ。

望まないのに、それを選択せざるを得ないという現実をどう変えていくのか、そここそが大切だと思うのです。
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フェイスブックからの転載、ここまで

追記
https://tu-ta.seesaa.net/article/500382270.html に続く

さらに追記
8月6日に行われた
「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」主催の集会の記録の動画が公開されました。
https://www.youtube.com/watch?v=AbSQv63-LjE
このNHKの番組で放映された施設改革の背景がかなり明確に語られています。
興味のある方には見ていただければ幸いです。
(また、この動画公開をしていただいたIWJは継続するための資金を募集しています)
この集会の記録についての、ぼくの視聴メモは以下
https://tu-ta.seesaa.net/article/500453460.html )

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