youtube動画紹介『津久井やまゆり園事件  あれから何が 変わったのか?』(IWJ制作) 紹介の文章追記

8月6日に行われた
「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」主催の集会の記録の動画が公開されました。
https://www.youtube.com/watch?v=AbSQv63-LjE
NHKのETV特集『鍵をあける 虐待からの再出発』で放映された施設改革の背景がかなり明確に語られています。
この番組については
https://tu-ta.seesaa.net/article/500371657.html
https://tu-ta.seesaa.net/article/500382270.html

興味のある方に見ていただければ幸いです。
(また、この動画公開をしていただいたIWJは継続するための資金を募集しています)

以下は当日のチラシのテキスト。
津久井やまゆり園事件
あれから 何が 変わったのか?
事件がもたらしたもの-障害福祉の今を問う

はじめに-国連勧告と津久井やまゆり園事件
 石 渡 和 実 氏(東洋英和女学院大学 名誉教授)

登壇者
 大 川 貴 志 氏(社会福祉法人同愛会 てらん広場統括所長)(県立中井やまゆり園当事者目線の支援改革プロジェクトチーム)
 吉 田 信 雄 氏(神奈川県立中井やまゆり園園長)

全体進行:杉浦 幹(勇気野菜プロジェクト)

2016年7月26日の凄惨な事件は、世間に大きな衝撃をもたらし、特に福祉の世界では変革を求める声が上がりました。それから7年の時が経ち、果たして変化は生まれたのか。何が変わり、何が変わっていないのか。この間、神奈川県の入所施設の改革に大きく関わって来られたお二人に、その経緯をうかがいたいと思います。さらに、変えて行こうとする中で、その障壁となっているものは何か。また、変えられないことがあるのか、等々。支援改革に立ちはだかる様々な問題を通して、今われわれが何をなすべきか。また、どのように行動していくべきかなど、皆さんとともに考える時を持ちたいと思います。

主催:津久井やまゆり園事件を考え続ける会


ぼくは原爆の図丸木美術館の役員でもあるので、8月6日は丸木美術館に行っていて、この日の会には参加できなかった。そういう意味で、この動画があることは本当にありがたかった。しかし、それだけでなく、あのNHKのETV特集
『鍵をあける 虐待からの再出発』を見てから、この動画を見たので、そこで語られていることについて、その背景を含めて本当に深く理解できたと感じた。

とりわけ、てらん広場統括所長であり、同時に今回の県立中井やまゆり園当事者目線の支援改革プロジェクトチームのリーダーでもある大川さんの話には深く考えさせられた。

この話をテープ起こししたいくらいだ。とりあえず見て欲しい。

以下、深く同意したり気になったりした部分を抜き出したら、けっこう大量になってしまった。

最初に石渡さん
彼女が津久井やまゆり園事件を語るときいつもいうように、事件直後に出来た神奈川県の検証委員会の委員長として、十分に職責を果たしえなかった、だからこうして、考え続ける会に参加しているという思いを語る。ここは外せない大事なところだと思う。
で、内容は
・津久井やまゆり園事件後の動きの概略を紹介
・国連障害者条約や日本審査との連関などの話。短くコンパクトにまとめられている。その国連での日本審査を担当したラスカスさんが忙しい中で横浜に来て知事や大川さんと話したとのこと。そして、ラスカスさんが講演の中で、インクルーシブ教育の不在と事件の連関を指摘。
・滝山病院とそれ以前の精神病院での虐待事件にも言及。
・鈴木敏夫さんによる津久井やまゆり園での意思決定支援チームの動きの報告を紹介。そのプロセスでの職員の意識の変化。支援者・当事者のエンパワメントサイクル。それが市民にも。
・それと同じ号で神奈川県の社会福祉士会の西原留美子さんの「生のスパイラル」で社会変革につながる」という話も。

津久井やまゆり園事件、ひろしま忌を想起する黙とうを挟んで

続いて大川さんの話
・出来た中井やまゆり園の改革プログラム(100頁超)の紹介。https://www.pref.kanagawa.jp/docs/dn6/prs/r2268440.html
・中井やまゆり園自体と虐待の概要
・刺激を排除する暮らしと求め、閉じ込めが起きた。そこで暮らしが失われた。日中もやることがない。
・原因としての3年程度での人事異動。誰でも支援が出来るようにと。
・この問題は教育からの分離から始まり、地域での分離、施設での分離とつながる。
・地域での行き場のなさ。「だから、・・・」。滝山病院も同じ。H23年に現場からの報告はあったのに受け止められなかった。
・「大切な時間を奪った」 閉じ込めによって、筋力を弱め、誤嚥を呼び、死に至る。
・中井やまゆり園だけではないのではないか?
・急激な老化。何十歳も老けて見える。
・死亡事案を検証。施設の暮らしが命を奪う。
・利用者を動かさないために部屋にポータブルトイレ。それを壊す利用者はおむつ。
・吉田園長のもとでの今の変化。
・変えたのは支援方法ではなく暮らし。暮らしの改善
・昼間にやることを工夫。草刈りの音でポータブルトイレを壊した人を草刈りに誘って成功。
・園の中から、園の外へ。
・中井やまゆり園で活動制限。「何もさせてもらえない」ことから来る悪循環を断ち、好循環に。
・日中活動をやってみて、利用者との新たな出会いと発見。支援の仕事、新たな出会い・発見がなければ不適切な支援につながる。
・当初目指した「誰でも支援できる=考えなくても」の誤り。悩み、葛藤することの大切さ。悩んでいいんだという環境、迷って悩める場所の大切さ。
・変わりつつある中井やまゆり園、障害の特性や問題行動を見るのではなく人となりを知ること
・「自閉症児を特別なものとして見ることをやめたとき、彼らが良く見えてくる」十亀史郎氏(三重県総合療育施設「あすなろ学園」)
・本人も職員も「なぜ、ここに来たのか」を知らない。本人はもののように動かされ、職員はそれに関心を寄せなかった。いま、吉田園長が利用者ひとりひとりと話をしている。
・いきなり連れてこられて、いきなり鍵をかけられ、怖かった。
・「なぜ、ここに来たのか」という説明、当たり前のことだが、それをやってる施設が日本の中でどれくらいあるのか問いたい。
・利用者も職員も当事者! 方法論を統一するのではなく、同じ方向を向くこと。
・利用者と職員が分離されていることをやめること。例えば、利用者用トイレと職員用トイレが分かれてるとかダメ。
医療問題の根深さ
・病院が治療して切れない。「栄養を切って看取り」という話になる。治療されずに失われたいのちも多い。
・現在も病院と厳しい話をしながら、なんとか治療してもらっている。
・精神病院の長期入院の例でも、変える場所がないと栄誉を切る。そして亡くなる。病院で亡くなる知的障害の人はたくさんいる。

・地域を変えていくために人々の価値観を変えていくしかない。教育の場も含めて。読み書きそろばんで評価する社会を変えていかないと、いのちは守れない。それがこの仕事を通して学んだこと。


吉田園長の話
・就任して2カ月
・中井やまゆり園を運営していく根本的な理念が欠けていた。そこに大きな問題があったというまとめ。
・暮らしを作っていく、社会に参加していくという、そもそものその人の人生を応援していくという、そういう基本的な理念がなかったのではないか? それが不適切な支援の背景
・利用者が主体となれるよう「人生を支援する」というのが大きな理念。もう一つがあたりまえに暮らせる地域共生社会をめざすということ。要は利用者さんが地域で暮らせるということ。
・一時的に地域で暮らせなくても、再び地域の中で、仲間とのつながりの中で暮らせるようにすること。
・園内外、とりわけ園外での日中活動の充実。そういう地域を作っていくという視点。
・中井やまゆり園をフィールドとしながら、知的障害者の医療の在り方も考えていく。
・地域移行とはGHや自宅で暮らすようになるということだけではなく、日中、地域で活動し、居場所を作り、仲間たちとつながり、地域の一員として地域の人と自然なふれあいをもてる暮らし。
・いきなりGHに移るということではなく、日中は地域で活動し、仲間を作り、夜は中井やまゆり園で生活してくところから始まってもいい。
・地域に移行した後も、困ったら戻れるようにする。
・上記の理念のもと、具体的な4つの柱 1,人生に共感し、チームで支援する。 2,暮らしを作る。 3,いのちを守る施設運営。 4,施設運営を支える仕組みを改善する。
・利用者との面談を始めて、まず、これまでの支援について、謝るというところから始まって、ここに来たのは「幸せになるため」という話をしている。
・職員は利用者を指導するためではなく、困ったときに助ける、一緒に悩むためにいる。これから一緒に幸せになっていきたいという話をしている。
・日中活動は、例えば手帳の解体、訓練のためではなく、リサイクルのために社会が必要としていること、社会とつながり、そして工賃を得るため。公園清掃も清掃の訓練ではなく、地域の人ともに社会参加のため。
・園外の活動を広げて、地域に出て地域の人とつながっていく。
・鍵をかけたりという行動の制限は、体を動かす機会を奪い、健康に対するリスクである。
・「行動障害」と呼ばれるような行為をただ制止するのではなく、その背景にある不安を見て、利用者と対話する、そういう視点で施設がちゃんと采井されているか、評価する仕組みの必要。
・利用者だけでなく、職員の不安や悩みやストレスに対応できる仕組みを作る。
・利用者の望みを第一に考え、その暮らしに寄り添い、当事者目線の支援を実践できる人材を育成する。
・国の基準ではなく、利用者の暮らしに合わせた人員配置。(ここは県の責任でなんとかなる部分があるかも。)
・中井だけの問題ではないので、中井の現場を踏まえて、人員不足が起きて健康が危うくなる危険のある現状を世の中や国などに対して、発信していく必要がある。
・規模が大きすぎる問題も見直していく必要がある。
・アドバイザー会議で外の眼で進捗を確認してもらうが、単に机上の会議ではなく、利用者一人ひとりの暮らしが本当に豊かになっているかというところを暮らしに踏み込んで助言をもらう。
・そのような中で、発表したアクションプランも固定したものとするのではなく、どんどん改善していく。
・Aさんについての羽生さんの報告。中井では頭突きなどの問題行動があるが、てらん広場では静かに本を読んでいる。この違いから考え始めた。日中活動を進めるなかで、Aさんが変わっていった。

発表はここまで、以下、質疑から。

大川さん
・U死刑囚の「家族は疲れ切った表情」 そのひとつの理由は、施設は何を言っても変わらないから。

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以下、質問や回答が続くのだが、疲れたので、とりあえずメモはここまで。
元気が出たら書き足すかも。


この中井やまゆり園の経験を受けて、神奈川県はこの動きを次にどのように広げていくか、津久井やまゆり園などの指定管理のところがどうなっているのか、それを公開できるのかなどが問われている。

NHKの横浜放送局記者 古賀さくらさんの以下のニュースによると、津久井やまゆり園でも動きはあるようだ。
私は生きる価値がないですか?
ここに園内での作業や地域交流の話が少し出ている。おそらくここでも中井やまゆり園と同様の改革が進んでいるのだと思う。しかし、この記事では過去の拘束の話には触れられていない。確かに、利用者や職員、あるいは関係者のこの事件に伴う傷は深いだろうし、そこに配慮が必要なのは言うまでもない。しかし、傷を深いところから癒すためにも、過去に何があったのか、そして、いま、何をどのように模索しているか、これからどうしていく予定なのかについて、もっとオープンにしていくことが求められているのではないかと思う。


また、この記事を探す過程で、2年前に以下のNHKの解説記事がでていたのに、いま、気がついた。考えるべき課題がコンパクトにまとめられている。
~~
相模原殺傷事件から5年 いまも残る入所施設の課題
そして、気になったのは千葉県での話に関する以下の記述。
~~~
千葉県は大規模施設の廃止に動いた自治体です。暴行死亡事件があった重い知的障害者が暮らす袖ケ浦福祉センターを2022年度末に廃止することを決定。この施設で40年以上暮らしてきた女性は、去年9月から半年かけて、どこで暮らすか、日中何をするかなど、本人の意思を一つ一つ確認して住む場所を決めました。
~~~
この具体的な話を聞いてみたいと思った。


今回の神奈川県の動きが日本の入所施設を変えていく契機になるかどうかが問われているようにも思う。



蛇足だが、やはりあの死刑囚の名前は書きたくない。それは人権に配慮してというのとは違う感覚だ。



追記

8月6日の集会の動画について知り合いが紹介の文章を書いてくれました。すでにフェイスブックで紹介したので、読んでくれている人も多いかもしれませんが、ここでも紹介させてもらいます。
~~~
 8月6日に津久井やまゆり園事件を考え続ける会が集会を行いました。
テーマは「あれから何は変わったのか―事件がもたらしたもの――障害福祉の今を問う」でしたが、この集会の様子がYoutubeで公開されています。
 登壇者は、石渡和美さん(東洋英和大学名誉教授)、大川貴志さん(てらん広場統括施設長、県立中井やまゆり園当事者目線の支援改革プロジェクトチーム)、吉田信雄さん(県立中井やまゆり園園長)
 すごくいい内容だったので是非見て欲しいと思いました。
 URLは次の通りです   https://youtu.be/AbSQv63-LjE
 2016年の事件後 津久井やまゆり園でも虐待や不適切な支援がありそのことが福祉の現場職員から障害者を虐殺する人間を生んだということは県の検証委員会や裁判、報道などで明らかにされていますが、津久井やまゆり園を運営する「かながわ共同会」は、自分たちは被害者だという立場を続けていて原因究明、改革のプロセスには踏み出せていないままです。(引用者注:津久井やまゆり園の現状について、最後に補足してます)
 しかし、上記の検証委員会で虐待が明らかになった県立県営の「中井やまゆり園」では、改革のプロセスが始まっています。この集会で、虐待の原因、どう変えていくべきか、障害当事者とともに変わって行くプロセスなどが詳しく話されています。
 一番印象的だったことは、神奈川県職員である吉田園長(23年6月着任)が
「私たちは、学校からも地域からも排除されて入所してくる人の生活を再建し、地域で暮らせるように、幸せになってもらうため、支援を行っている。そうすると、確かにこれまでより現場の負担は大きくなっていく、それの困難を行政に伝えても、行政が 『入所者にはルーティンをこなし 安心安全に 何事もなく過ごせるようにする制度設計しかない。』と答えたならば、それにはモノ申し、変革につなげていかなければならない。民間には難しいだろうか。ならば、県営の私たちにはやるべきことだと思っている」
とおっしゃっていた事だった。
 そのほか在野の研究者として、あるいは神奈川県で障害者の権利擁護を実践する石渡さん、てらん広場の統括施設長でありながら中井やまゆり園での変革の為にも現場に入る大川さんの話、どれも心に響く言葉が満載です。
 支援施設職員にだけでなく、誰にも見てもらいたい内容だと思い発信します。
 登壇者の話だけで1.5時間、でも初めの1.5時間を見ると最後まで見たくなると思います。
 是非ご覧ください
 重ねてNHK Eテレ特集の「鍵を開ける」(中井やまゆり園の改革に向けた2年間のドキュメント)
 (こちらは録画している人がいなければ視聴は難しいかも)
 神奈川新聞の中井やまゆり園の特集記事などもおすすめです。
 (こちらは有料ですが、読めます。
  連載「やまゆり園事件は問う 中井園の模索」まとめ
~~知り合いの紹介ココまで~~
ちなみに、ぼくのこの動画の視聴メモは以下
上記のメモに書いた津久井やまゆり園の現状についての報道に関しては以下の通り
~~~
NHKの横浜放送局記者 古賀さくらさんの以下のニュースによると、津久井やまゆり園でも動きはあるようだ。
『私は生きる価値がないですか?』
ここに園内での作業や地域交流の話が少し出ている。おそらくここでも中井やまゆり園と同様の改革が進んでいるのだと思う。しかし、この記事では過去の拘束の話には触れられていない。確かに、利用者や職員、あるいは関係者のこの事件に伴う傷は深いだろうし、そこに配慮が必要なのは言うまでもない。しかし、傷を深いところから癒すためにも、過去に何があったのか、そして、いま、何をどのように模索しているか、これからどうしていく予定なのかについて、もっとオープンにしていくことが求められているのではないかと思う。
~~

この紹介を書いてくれた友人は、この動画を見るだけで、虐待防止の研修にもつながるのではないかと言っていました。また、使えるところがあれば、使ってください、とのこと。

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