『暗闇のなかの希望』(ちくま文庫版)が出てた(「ほんの紹介」75回目)

2024年5月に発行されたたこの木通信に送った原稿。
本の紹介の原稿なのに本の紹介を詳しく掲載していなかったので、最初に補足
『暗闇のなかの希望 増補改訂版 ——語られない歴史、手つかずの可能性(レベッカ・ソルニット著 ちくま文庫 2023年4月) 出版社サイト https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480438270/


『暗闇のなかの希望』(文庫版)が出てた

(「ほんの紹介」75回目)

 いままで紹介した本のリストを見返したら、この表題の本を紹介していなかった。そして、この大好きな本が文庫版になっているのをすっかり見落としていた。しかし、最近、行きつけの近所の本屋「葉々社」(梅屋敷駅近く)にちゃんと目立つように置いてくれてた。お気に入りの本屋が近所にあるのはほんとうに幸せ。

 さて、この本の紹介、何から紹介しようか迷う。まずは文庫版の序文から引用。こんなことが書いてある。

 私たちの多くは、自分たちが生きている社会について尋ねられたら、それは資本主義の社会だと答えるだろう。しかし私たちが日常生活の大きな部分を生きているやり方は本質的に非資本主義的であり、反資本主義とさえいえる。家族の生活、友人関係、自分の務め、あるいは社会や精神や政治に関わる集団とどう関わり、どうコミットするかということにおいては金銭を介することなく愛や信条から行動することがいくらでもある。

 確かに日常生活はそのとおりだ。同時に、食べるために資本主義っていうかお金にも依拠している。そして、障害者福祉と重なる領域で仕事をしていると、白か黒かはっきりしない領域もある。そう、まさにその話はこの本で20年近く前に教えてもらった話だ。著者のレベッカはこんな風に書く。

 「あれかこれか」の選択問題の正解は、たいていの場合「どちらも」である。逆説的な関係に向き合うには、一貫性にこだわって、一方を切り捨てるのではなく、両方とも掬い上げるのが一番まっとうなやりかたなのだ。・・・一方のみを取り上げ、他方を閉め出すことではない

 お金のため、生活するためにヘルパーや相談支援の仕事をしていて、そこで賃金を得るのは「金銭を介することなく愛や信条から」の行動ではない。しかし、それが金のためだけの仕事かと言われたら、そうではない部分も多い。それは「どちらも」なのだろう。どちらもあるにもかかわらず、資本主義は大きな顔をして、あたかもそのロジックだけで世界は回っているかのように語られる。しかし、この序文にレベッカが書いているように、金銭を介することのない行動の領域はあり、それが仕事のモチベーションにつながる部分ではある。ただ、それは同時に「やりがい搾取」の原因にもなるのだけど。そこで、お金のためだけではなく、障害者支援を生業(なりわい)にしてる事業者や労働者はそのバランスをどこでとるかで悩むことになる。

 しかし、最近は『障害福祉サービスの***は儲かります。素人でも始められます。コンサルやります』みたいな広告が多くて辟易するのも事実。ほぼほぼお金のためだけにGHを始めたんだろうなぁと思える事業者も少なくない。ただ、そういうところの中に居心地がよさそうなところが稀にあり、逆もあるのが不思議。

で、この本はどんな本?

 そう、この本の紹介をすることをまた忘れるところだった。で、どんな本かと聞かれたら、ぼくはこんな風に応える。

 ガザやウクライナでの戦争は終わらず、温暖化には歯止めがかからない。ほんの一握りの人たちが大儲けして、戦争や人殺しの道具の開発や購入には湯水のようにお金が使われる。他方で、食べものを手に入れることが出来ず、飢えて死んでいく人が大勢いて、薬や治療を行うお金や環境がなくて、治療可能な病気やけがで死んでいく人も膨大に存在する。世界を見回すと、絶望するしかないような気分になる。そんな世界で、まだ十分に着ることが出来る衣服を捨てて、環境にやさしい新しい服を買うことがSDGsですよと、捨てる罪悪感を薄めるために店先にリサイクルボックスが置かれる。環境にやさしいペットボトルの水が大量に売られる。水道の水を飲めばいいのに。この本は、そんな偽の希望じゃなくて、絶望の向う側にある一筋の光のような希望を感じさせてくれる。と書いて紙幅が尽きた。具体的にどんなことが書かれてるかってことも書きたかったのに・・・。

来月、書けるかな?

==原稿、ここまで==


続きを書いてます。

いないとは思いつつ、早めに読みたい人は以下からどうぞ(有償です)

https://takonoki2023.seesaa.net/article/takonoki440.html



続きは
https://tu-ta.seesaa.net/article/504146959.html


この記事へのコメント

たかこ
2024年07月13日 09:08
PARC自由学校で、ご一緒しているものです。感覚的な人間なので、本も読めていないのですが、なんだか、大事なことを言っていらっしゃるような気がして、いつか、また、教えていただける機会があることを待っています。
つるた
2024年09月12日 01:53
たかこさん
コメント、ありがとうございました。
返信が遅れて、ごめんなさい。
いつか、お話が出来ればと思っています。