NHKの【“受け入れ施設 空きがない”障害者 延べ2万2000人待機】と【近くに空きがなく… 知的障害者7700人超 県外施設利用と判明】というニュースについて

タイトルに書いた二つのニュースについて教えてもらった。

ちょうどこれをブログに記録しているいま、7月23日のNHKの13時のニュースでこのニュースを受けた武見厚生労働大臣のコメントが報道されていた。政府としても待機者の調査を行うとのこと。

【“受け入れ施設 空きがない”障害者 延べ2万2000人待機】
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240709/k10014505941000.html

【近くに空きがなく… 知的障害者7700人超 県外施設利用と判明】
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240710/k10014507541000.html


また、いま検索したら以下のニュースも
知的障害者 ショートステイに長期滞在 全国1200人以上 なぜ?】
 
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240711/k10014508891000.html


NHKに意見を送った後に見つけた記事
少し古い5月の記事ですが、こんな記事も
【「私が死んだら息子は誰が…」在宅の障害者が増加 親は不安も】
 
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240531/k10014466731000.html






気になったことをNHKあてに意見を送ったのが以下

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件名(番組名など)

【“受け入れ施設 空きがない”障害者 延べ2万2000人待機】と【近くに空きがなく… 知的障害者7700人超 県外施設利用と判明】について

メディア

その他

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タイトルに書いた二つのニュースをWEBで読ませていただきました。
確かに生活する場がなくて、困っている人が多いのは事実だと思います。
それを調査報道する意味は大きいと思います。そういう意味では発信すべき大切なニュースだったと思います。

しかし、障害者権利条約で入所施設が否定されたことや、自立生活(支援付き一人暮らし)が少しずつ増えていることにも言及してほしかった、とも思ったのでした。

一人暮らしに関しては、世田谷区の担当者のコメントとして、最後のほうに少しだけさらっと書かれてはいますが、これじゃあ、わからないだろうなぁと思いました。

権利条約がうたう「他のものとの平等」とは、どのような暮らしなのか、そういう視点での報道を期待しています。











とりあえず、ニュースが消えないように記録

“受け入れ施設 空きがない”障害者 延べ2万2000人待機

障害のある子どもと同居している親の中には、みずからが高齢になり、子どもの将来を考えて「入所施設」の空きを待ちながら過ごしている人もいます。

重度知的障害や自閉症のある息子を持つ母親は「重い障害があっても受け入れてくれる施設はどこも空きがなく、息子が暮らせる場所が本当にあるのか心配です」と話します。

こうした障害のある人やその家族が、望む住まいを確保できていない実態が明らかになりました。NHKが専門家とともに全国の自治体に調査を行ったところ障害者向けの入所施設やグループホームの利用を希望しながら空きがないため待機状態にある障害者が少なくとも延べ2万2000人余りいることがわかりました。

障害者の住まい 施設やグループホームに入れず待機 NHK調査

自宅などで暮らす障害のある人は、国の推計で全国で600万人を超え、障害者手帳の保有者別では身体障害者が415万人、知的障害者が114万人、精神障害者が120万人となっています。

このうち知的障害者は、親と同居している割合が6割以上と、身体障害や精神障害がある人と比べて割合が高く、介護を担う親の高齢化に伴って自宅での生活が困難になるおそれがあるとされています。

これまで障害者向けの入所施設やグループホームの待機者について全国的な調査は行われておらず、今回、障害のある人の住まいの現状についてNHKが専門家と共同で、アンケート調査を行いました。

全国のすべての都道府県と市町村それに東京23区を対象として、47都道府県と全体の40%余りにあたる696の市区町村から回答を得ました。

それによりますと、▽入所施設の利用を希望しながら待機状態にある人全国に少なくとも延べ2万309人
グループホームの利用を希望しながら待機状態にある人が少なくとも延べ1910人いることがわかりました。

待機者の7割以上は知的障害者でした。

待機者の中には、親の高齢化や病気などで直ちに入居したいと希望している人のほかにも、将来、自宅で介護できる人がいなくなったときに備えて申し込んでいる人もいるとみられています。

さらに各自治体に待機者が生じる理由などについて尋ねたところ、特に重度の知的障害者が利用できる住まいの不足を訴えるところが多く、受け皿となるグループホームが足りていないとか、専門的な介護のスキルを持った人材が不足しているといった意見が目立ちました。

待機している障害者の親子は

障害のある子どもと同居している親の中には、みずからが高齢になり、子どもの将来を考えて「入所施設」の空きを待ちながら過ごしている人もいます。

福岡市に住む石橋益美さん(65)は重度知的障害や自閉症のある息子の法幸さん(39)と68歳の夫の3人で自宅で暮らしています。

法幸さんは気持ちが不安定になると大声をあげるなどの行動が出る「強度行動障害」です。

こだわりが強い面があり、自宅では気持ちが落ち着くよう30年以上使い続けているパズルをするなどして過ごしています。

食べ物がのどに詰まらないよう、一口大に切ってあげるなど、生活全般で介護が欠かせません。

このほかてんかんの発作が現在も月に10回以上あり、入院が必要になることもあるなど医療的なケアが必要です。

その一方で法幸さんは人見知りしないやさしい性格で、近所の人からは「のりくん」と呼ばれて愛されてきたといいます。

益美さんは、40年近くの間、毎日のように一緒に公園に散歩に出かけるなど、寄り添い続けてきました。

しかし、これまでどおり自宅で法幸さんの暮らしを支えることは難しくなってきています。益美さんは高齢になり、脳の手術の後遺症や腰痛にも悩まされ、体力的な衰えを感じています。

将来、自分が面倒をみることができなくなったときに備え、法幸さんが安心して暮らせる住まいを探していますが、重度の知的障害がある人も受け入れている福岡市内の入所施設やグループホームはいずれもいっぱいで空きがないということです。

入所施設の「待機者リスト」に載せてもらったものの、施設からは入所のめどは伝えられておらず、法幸さんの住まいを見つけられるのか不安を感じています。


益美さんは「息子の場合は最重度の障害と病気という2つの側面があるので、『誰でもいいから託したい』とはなりません。重い障害があっても受け入れてくれる施設はどこも空きがなく、息子が暮らせる場所が本当にあるのか心配です。知人の中には自宅から離れた県外の施設に入居したという人もいますが息子と会えなくなるのも寂しいです。できれば自宅の近くに利用できる住まいができてほしいです」と話していました。

国は施設から地域へ移行の方針

障害者が暮らしている場所としては自宅のほかに、身近な地域のアパートや住宅などで少人数で暮らす「グループホーム」、比較的大規模な施設で集団生活を送る「入所施設」などがあります。このほか病院に入院している人もいます。

国は「障害者総合支援法」や国連の「障害者権利条約」に基づいて、障害のある人が、身近な地域で暮らせるようにするという方針を掲げ、「入所施設」から「グループホーム」などへの移行を進めています。


「入所施設」については、定員数を段階的に減らす方針を示していて、ことし3月の時点で全国の「入所施設」の入所者はあわせて12万3000人余りと5年前に比べて5300人余り減少しました。

これに対し、「グループホーム」の入居者はあわせて18万7000人余りとこの5年間でおよそ6万5000人増えています。

一方、各自治体によりますと、障害者の自宅以外の暮らしの場に対するニーズは、近年、急速に高まっているといいます。

厚生労働省が入所施設や病院以外の、自宅やグループホームなどで暮らしている「在宅」の障害者について、ことし5月に公表した調査によりますと、知的障害がある人については、おととしの時点で推計で114万人とその6年前に比べておよそ18万人増加しました。

医療の進歩で平均寿命が延びたことなどが理由で増加しているとみられていて、40歳以上の知的障害がある人の数は42万人と2000年と比べて5倍以上になっています。

また、全体の64%が親と同居しています。

自宅で介護にあたってきた親の高齢化も進んでいて、自治体などによりますと子どもの将来を考えて自宅以外の暮らしの場を求める人が増えているということです。

【アンケート調査の概要】

アンケート調査は、ことし2月から5月にかけて全国47都道府県のほか、能登半島地震で大きな被害を受けた6市町を除く、全国の市町村と東京23区のあわせて1735市区町村を対象にNHKが専門家と共同で実施しました。

このうち、すべての都道府県と、市区町村の40%余りにあたる696自治体から回答を得ました。

“待機障害者”把握進まず

調査では、自治体が“待機障害者”の全容を把握しきれていない実態がわかりました。

入所施設では32の都府県479の市区町村待機者の有無を「把握している」と回答した一方で、グループホームの待機者の有無を把握しているのは8つの県259の市区町村にとどまりました。

調査では入所施設やグループホームの利用を希望しながら待機している人数の一端が明らかになりましたが、そもそも、入所施設の待機者数を把握していないと答えた自治体が3割を超えました。

また、待機者の調査方法について尋ねたところ、都道府県では直接、施設から待機者数の報告を受けているところや市区町村に対して問い合わせているところがあったほか、市区町村では施設から報告を受けているところや、ケースワーカーが各家庭を訪問した際に利用の必要性を判断して待機リストを作成しているところもあり、把握方法にもばらつきがあることもわかりました。

自治体からは“環境整備の課題” 指摘する声

また、調査の自由記述欄では、多くの自治体から課題を指摘する声が聞かれました。

障害者の暮らしの場をめぐる課題を尋ねたところ、市区町村の担当者からは「国の方針に沿って障害者の入所施設からグループホームへの移行を進めているが、障害が重い方の受け皿が足りないので、地方自治体や民間事業者の負担ばかりが増している」とか「グループホームが多く作られても、重度の障害に対応できる専門性がなく、受け入れられないという事業所がほとんどなので、入居先が見つけられない方が多くいる」など、重度の知的障害者の暮らしを支える環境が整備されていないという内容が目立ちました。

さらに、知的障害のある人が利用できる暮らしの選択肢が十分確保されているか尋ねたところ、「確保されていない」が41.2%にのぼり「確保されている」としたのは10.2%にとどまりました。

一部の自治体では調査 大阪府では

入所施設やグループホームの待機者がどのくらいいるのか、一部の自治体では調査を始めています。

大阪府は去年8月、大阪市を除く府内の市町村を対象に入所施設の待機者について初めて実態調査を行いました。

それによりますと、去年3月末時点で府内の待機者1077人のうち9割以上の1009人が知的障害がある人で、待機の期間は半数以上が5年以上にのぼっていました。

待機している障害者のうち自分を傷つけるなどの行動が見られる「強度行動障害」の人は全体の57%と、障害が重く支援に人手や専門のスキルが求められる障害者が多くなっています。

専門家「行政は待機者の状況を調査し早急に対策検討を」


NHKと共同で調査を行った障害福祉に詳しい佛教大学社会福祉学部の田中智子教授は「障害のある人たちが医療の進歩で、長生きできるようになったことは喜ばしいことだが、家族の高齢化が進む中で重い障害にも対応できる住まいは十分に足りているとは言えない状況だ。今回の調査で明らかになった待機者は、こうした住まいの不足や将来への不安を象徴した人数だと考えられる」と話していました。

また、「待機者を把握するということは障害者がどのような生活をしているかという実態を把握することとイコールだと思う。今回の調査では自治体ごとに待機者の把握方法が異なっていることもわかったので、まずは待機者の定義を国が統一的に示し、それに基づいて具体的に市町村が待機者数を正確に把握していくことが求められる」と指摘したうえで、「障害者が希望する暮らしができる選択肢をまずは確保したうえで、重度の障害者も託せるよう、報酬を引き上げたり研修を充実させて人材を確保したりしていく必要がある」と話していました。

100人超える待機者がいる施設は

福岡市南区の障害者向けの入所施設「かしはらホーム」では、現在、100人を超える待機者がいて介護を担ってきた親が亡くなったり、グループホームの利用を断られたりした障害者の入所希望が相次いで寄せられています。

この入所施設では重度の知的障害がある人など49人が暮らしていて、集団生活でもプライベートな空間が確保できるように、全員に個室を設け、職員が24時間体制で支援にあたっています。

障害者の高齢の親などから入所の申し込みが相次いで寄せられていますが、なかなか空きが出ず、ことし4月時点で、114人が待機しているということです。

待機者の中には、同居している親が80代以上だったり、両親のうち1人が亡くなったりして、自宅での生活が困難になっている緊急性の高い申し込みもありますが、断らざるを得ない状況だということです。

また、ここ最近は、グループホームに一度は入居できたものの、他の入居者をたたいてしまうなどして退所を求められ、次の住まいが見つけられずに、申し込んでくる人もいるということです。

入所施設を運営する社会福祉法人はこうした障害者のニーズに応えようと、市内でグループホームを5か所運営していますが、いずれも満員の状態だということです。

重度の障害者でも利用できるグループホームを増やそうとしても、人手不足が続いていて、ニーズを満たせるだけの支援体制を整備するのが難しいといいます。


施設長を務める小川玲子さんは「今すぐに入所したいという緊急性の高い人でも断らざるを得ない状況で、とても心苦しく思っています。地域で暮らせる環境を整えたいですが、支援できる職員を確保することは難しいのが現状です。地域の資源はまだまだ不足しているので、家族が安心して『託したい』と思えるような施設を増やしていかなければならないと思います」と話していました。

自治体も対応に苦慮

障害者が入所施設やグループホームに入れずに待機している問題への対応に自治体も苦慮しています。

東京・世田谷区は、ケースワーカーが障害者の暮らす家庭を訪問をした際に、入所施設やグループホームへの入居希望や生活の状況を把握し、定期的にまとめています。

区によりますとことし3月時点で、入所施設への入所を希望し待機している人が123人、グループホームへの入居を希望し待機している人が151人で、両方に申し込んでいる人を含めあわせて延べ274人が待機しています。

待機者の中には、同居する親が高齢になるなどしてできるだけ早く施設に入所したいという人のほかにいますぐではないものの将来的には入所したいと考えて待機している人もいるということです。

都市部では、高い土地代が整備を進める上での課題になっているとして、世田谷区は公用地を福祉事業者に貸したり、グループホームの家賃の一部を補助する制度を設けたりしているほか、区民に空いた土地や建物の提供を呼びかけるチラシを作るなどして、グループホームの設置を後押ししています。

ことし1月には世田谷区が公有地を福祉事業者に無料で貸す形で重度の知的障害がある人が利用できるグループホームがオープンしましたが、10人の定員に対して100人を超える入居希望が寄せられ、ニーズの高さがうかがえました。

しかし、重度の知的障害がある人が生活できるグループホームを整備するには、一定の広さやバリアフリーなどの設備が必要で費用がかかるほか、重い障害の人に対応できる専門的なスキルを持つ福祉人材を施設側が確保することも難しく希望を満たせるだけの住まいを整備できる見通しは立っていません。

世田谷区障害施策推進課の宮川善章課長は「重度の障害者を含めて入所施設やグループホームを希望する方に対して十分な支援をできるような体制づくりや環境の整備がまだまだ至っていないと感じている。グループホームや1人暮らしなど、障害者が地域で暮らすための専門的な知識を持ったスタッフをどうそろえて、一貫したサービスや支援を提供していけるかが大きな課題だ」と話していました。

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近くに空きがなく… 知的障害者7700人超 県外施設利用と判明

施設やグループホームに空きがない
空きができても受け入れられない

障害者の住まいの実態について、NHKが全国の自治体に調査したところ、自宅がある地域を離れ、別の都道府県の施設を利用している知的障害のある人が全国に少なくとも7700人以上いることがわかりました。

一体、何が起きているのでしょうか。

(7月11日の「おはよう日本」で放送予定)

「たとえ空きが出ても」

重度の知的障害と自閉症のある宮澤玄太さん(42)。

両親が暮らしている東京・江東区の自宅を離れ、現在は青森市内のグループホームで暮らしています。


玄太さんは自分を傷つけるなどの行動がみられる「強度行動障害」です。

水へのこだわりが強く、気持ちが不安定になると水を飲み続けて意識を失ってしまうことがたびたびあったといいます。

青森に移る以前は、平日は自宅近くのグループホームで過ごし、休日は職員が足りないため自宅に戻る生活を続けていました。

そうした中、母親の幸江さん(73)に乳がんが見つかりました。

玄太さんと母親の幸江さん

玄太さんの父も大けがで入院。

自宅で家族の介護を受けながら過ごすことが難しくなりました。

幸江さんは、都内や周辺の県で、玄太さんが利用できる重度の知的障害がある人向けの入所施設やグループホームを30か所以上見学して回りました。

しかし、すべてが満員で待機者がいたほか、玄太さんの特性への対応は職員への負担が大きいとして、「たとえ空きが出たとしても受け入れはできない」と利用を断られたといいます。

片道5時間 会いにいく生活

「重度の知的障害者でもすぐに入居できるグループホームがある」

行き先が見つからない中、幸江さんは知人からそんな話を聞きました。

その場所は、青森市でした。

“自宅やふるさとから遠く離れてしまう”

幸江さんは悩んだものの、利用を決断したといいます。

母の幸江さん

玄太さんが青森で暮らし始めて2年ほどは環境に慣れずに暴れてしまうこともありました。

当初は心配が絶えませんでした。

しかし、スタッフの専門的な支援のおかげもあり、入居から8年がたった現在は落ち着いた生活を送れているということです。

幸江さんは時間を見つけては自宅から片道5時間かけて玄太さんに会いに行く生活を続けています。

6月、2か月ぶりに青森を訪れた際には、一緒に市内の温泉に行ったり、町中を散歩したりして家族の時間を過ごしました。

幸江さんは、受け入れてくれた青森の施設に感謝している一方で、玄太さんと離れて暮らす寂しさはいまも感じているといいます。

青森の施設を訪れる母親の幸江さん

母親の幸江さん
「玄太は私の生きていく支えみたいなもので、『元気でいよう』という力をわかせてくれる宝物のような存在です。自宅の近くでは行き場がなかったので、支援が大変な玄太を受け入れてくれた施設には感謝をしていますし、信頼もしています。自宅の近くには子どもを『託せる』と思えるような場所は少なくもっと選択肢がたくさんあると良いなと思います」

東京近郊の出身者が7割超

青森市にある社会福祉法人では、自宅近くで利用できる入所施設やグループホームを見つけられない障害のある人のために市内に住まいを設置し、現在、200人を超える東京出身の障害者が暮らしています。

青森市にある社会福祉法人「ゆきわり会」は、市内でグループホーム31か所と、入所施設1か所を運営しています。

運営するグループホームと入所施設では、先月の時点で328人の障害者が暮らしていますが、利用者の出身県別では、全体の73%にあたる241人が東京近郊の出身者です。

▼東京都 202人
▼千葉県 22人
▼埼玉県 9人
▼神奈川県 8人

法人によりますと、全員、重度の知的障害があり、自分を傷つけるなどしてしまう「強度行動障害」の人も多いということです。

また、利用者のほとんどが自宅近くでは入所施設の空きがなかったり、グループホームの利用を断られたりした人たちだということです。

法人では、特に都市部で重度の障害者向けの住まいが不足していたことから、10年前に、東京近郊の重度の障害者を受け入れるためのグループホームの事業を立ち上げました。

グループホームの入居者の活動

青森では都市部と比べて土地代にかかるコストが安い分、職員の給料を上げて人材を確保しているほか、職員向けの研修を行い、重い障害の人にも対応できるスキルの向上にも取り組んでいます。

また、気持ちが不安定になると物を壊してしまう障害者も多いことから、テレビや照明には専用のカバーを取り付けるなど、利用者が安全に過ごせるための設備も設けています。

現在も、東京近郊で利用できる入所施設やグループホームを見つけられない障害者の親などから、入居希望が相次いでいるため、法人はグループホームを増やしていて、ことし10月には、新たにあわせて20人が入居できるホームをオープンする予定だということです。


「ゆきわり会」 関良 理事長
「東京では『重度の障害者たちの行き場がない』と話を聞き家庭での生活も厳しい状況にあるということだったので、何とか対応したいと考え、このような事業を始めた。最近は全国的にグループホームが増えているが結局は支援が難しい重い障害のある方が、退居を迫られているという入居依頼が目立つので、まだまだ重度障害者が暮らせる環境は少ないのが現状だと思う。こうした障害のある方を受け入れるからには、楽しく安心して暮らしてもらえるように対応したい」

こうしたケースはほかでも起きているのか?

障害者の住まいの実態について、NHKは専門家と共同で全国のすべての市町村(※)と東京23区に対しアンケート調査を行い、全体の40%余りにあたる696の市区町村から回答を得ました。(※能登半島地震で大きな被害を受けた6市町は除く)

その結果、規模の大きな「入所施設」や地域の住宅などで少人数で暮らす「グループホーム」の利用を希望しながら空きがないために待機状態にある障害者が少なくとも延べ2万2000人余りいて、特に重度の知的障害がある人の住まいが不足していることがわかりました。

さらに、この調査の中で知的障害のある人が利用している入所施設やグループホームの場所を市区町村に尋ねたところ、もともと暮らしていた自宅などがある地域を離れ、別の都道府県の入所施設を利用している人が4697人、グループホームを利用している人が3068人いることがわかりました。

その理由を複数回答で尋ねたところ、最も多かった回答は

入所施設について
「自宅近くに入所施設があるが、空きがないため」50.6%

グループホームについて
「自宅近くにグループホームはあるが、障害の特性と合わないため」54.9%

条件にあう施設が見つけられずに住み慣れた地域を離れている障害者が多いことがわかりました。

夫が白血病に 貯金は底をつき…

遠方の施設に子どもを預けた親の中には、子どもに会いに行きたいのに病気や経済的な理由で2年以上会えていないという人もいます。

関西地方に住む40代の女性は、重度の知的障害と自閉症のある20代の娘が東北地方の施設に入居していて、親子離ればなれで生活しています。

関西地方に住む40代の女性

娘は「強度行動障害」で、こだわりが強く、深夜にドライブをせがんだり、気持ちが不安定になると大きな声をあげたりすることもあったということです。

こうした中、夫が白血病と診断されて長期入院が必要になりました。

女性は娘の世話を1人で担う期間が長く続いたことで体力が持たなくなり、自宅以外で娘が利用できる住まいを探すことにしました。

しかし、県内の入所施設には空きがなかったほか、重度の障害がある娘を受け入れてくれるグループホームもありませんでした。

その際、利用していた福祉サービスの関係者からすぐに入居ができるという東北の施設を紹介され、すがる思いで入居を決めたといいます。

母と娘

病気の影響で夫は勤務していた会社を退職し、現在は女性がパートを続けながら生活をつないでいます。

夫は現在も通院が必要で、入院や手術などであわせて約500万円の出費が必要となり、貯金はほとんど底を突いてしまったということです。

女性は、娘が施設でどんな暮らしをしているのか不安が尽きないということですが夫婦で往復10万円ほどかかる交通費や宿泊費を負担することも難しく、入居してから2年半以上もの間、一度も直接面会ができていません。

定期的に施設とテレビ電話をつないで娘の様子を確認していますが、慣れない場所でどのように暮らしているのか直接把握できず、心配が絶えないといいます。

遠方の施設に娘がいる女性
「娘は重い障害がありますが私が泣いているとじっと顔を見ながら心配してくれるような優しい子で、自分にとっては命のような存在です。自宅の近くに利用できる住まいがあればすぐにでも戻ってきてほしいですが、そのような環境はありません。施設のことは信頼していますが不安と心配でいっぱいです。それでも今は会いに行くこともできません」

法の理念と現実

障害者総合支援法」では、障害者の支援について、どこで誰と生活するかといった障害者の選択の機会が確保されることを基本理念に掲げています。

しかし、今回NHKが行った調査では、障害者の住まいの選択肢を確保することの難しさを訴える自治体が多くみられました。

各自治体に知的障害のある人が利用できる入所施設やグループホームでの生活、それに1人暮らしなど暮らしの選択肢が十分確保できているか尋ねたところ、「確保されていない」が41.2%で、「確保されている」と回答したのは10.2%にとどまりました。
(「どちらとも言えない」41.8%、「わからない」6.8%)

また、障害者の住まいの現状や課題を自由記述で尋ねたところ、選択肢の不足が遠方の施設利用につながっていると回答する自治体もありました。

自由記述欄
「町内に暮らしの場となる施設などがほぼないに等しく、障害者が暮らしの場を選べる状況にない」
「重度の方を受け入れてくれるグループホームホームの数が少なく、都内の入所施設は希望者が多く入所できない。何年も入所のために待機したり遠方の施設を選ばざるをえない方もいる」

「選択できる環境づくりが必要」

NHKと共同で調査を行った障害福祉に詳しい佛教大学社会福祉学部の田中智子教授は、次のように指摘します。


佛教大学社会福祉学部 田中智子教授
「自分の意思に基づく選択であればよいが、障害者の暮らしの場が至るところで足りていない中、空きがある遠方の住まいに移動するしかなかった人も少なくないと考えられる。知的障害のある人は自分の思いや感情を口にすることが難しい人も多く家族が代弁者の役割を果たしてきた面もある。子どものことが『気になるけど会えない』とか『会いたいけど会えない』というのは非常に大きな問題だ」

そのうえで、

「家族が会えるよう行政が面会のための交通費などを補助したり、根本的には、障害者が安心して暮らせる住まいを各地に整備したりすることが必要で本人が希望したときにはまた違う場所で暮らすことができるような、選択できる環境を作ることが大切だ」







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知的障害者 ショートステイに長期滞在 全国1200人以上 なぜ?

『仮住まい』が続いている状態
人権に関わる重大問題だ

そう指摘される障害者の住まいについてです。NHKが全国の自治体に調査したところ、多くの知的障害のある人が原則、短期間の利用に限られている「ショートステイ」の施設に長期滞在している実態が明らかになりました。

国が目安としている年間180日を超えて利用している人は、全国に少なくとも1200人以上いると判明。

なぜ、ショートステイにもかかわらず、長期化してしまうのでしょうか?

【7月12日(金)の「おはよう日本」で放送予定】

自宅で生活ができなくなって

寝泊まりする場所を日々転々とせざるをえないという人がいました。

大阪・堺市の南田憲吾さん(25)。重度の知的障害と自閉症があります。

体を動かすことが好きで、明るい笑顔を見せる南田さんは、近所の人から「けんけん」と呼ばれ愛されてきました。

幼い頃の南田さん

18歳になるまでは家族と一緒に暮らしていました。

しかし、成長とともに、自宅で過ごすのが難しくなったといいます。

気持ちが不安定になると自分を傷つけてしまう。

物を壊してしまったり、夜通し大声をあげたりしたことも。

24時間体制での見守りが必要ですが、ヘルパーは人手不足で毎日は来てもらえません。

介護していた両親の体力も続かなくなり、自宅で生活を続けることが難しい状態です。

破られたカレンダー

“安心して暮らせるグループホームや入所施設をなんとか見つけたい”

そんな家族の思いとは裏腹に、南田さんのような行動がみられる重度の知的障害のある人が入れる住まいには、空きがないということです。

このため、1年のほとんどを市内5か所のショートステイの施設を転々としながら寝泊まりしています。

南田さん(右)

施設の予約がとれなかった日だけ自宅に戻り、夜間はヘルパーに来てもらって暮らしています。

取材した今月5日は、ショートステイに宿泊するため、自宅で着替えや薬を大きなかばんに入れて日中通っている作業所に持ち込み、午後4時ごろ、職員に連れられてこの日泊まる施設へ荷物を持って移動していました。

南田さんはこうした生活をおよそ7年前から続けていて、2023年度は、年間に寝泊まりする場所をあわせて275回、転々と変えながら生活することを余儀なくされたということです。


先の見通しが立たない不安定な暮らしが続く中、南田さんはカレンダーを見ることに強いこだわりを持つようになりました。

さきざきの予定がはっきりわからないと、破ってしまいます。

取材した日には、施設の職員が宿泊場所の書かれたカレンダーを手渡しましたが、部屋の中でその内容を見つめたあと、細かく破っていました。

カレンダーを見つめる南田さん

南田さんの支援計画を担当している、相談支援専門員の松永智里主任は次のように話しています。

相談支援専門員 松永主任
「市内では重度の障害者に対応できる住まいは足りておらず、新たなグループホームが完成したら数十人が希望を出すような状況です。住まいの資源自体が少ない中で本人にあった施設を紹介することは難しいのが現状で、今後の生活の見通しが立てづらい状況です。日替わりで住む場所が変わるので大変だと思いますが、少しでも本人に合った暮らしができるよう、支援者と家族で協力しながら、対応しています」

そもそもショートステイって?

「ショートステイ」は、障害のある人を介護する家族が急な病気で一時的に介護ができなくなった時など緊急時に、短期間に限って障害者が宿泊し食事や入浴などの介護を受けられる福祉サービスです。緊急時のほかにも、家族がふだんの介護でたまった疲れをとるために利用されることもあります。


原則、短期間の利用を想定していて、厚生労働省の要領では目安となる1年間の利用日数について「利用者の心身の状況などを勘案して特に必要と認められる場合を除き、年間180日を超えないようにしなければならない」としています。

180日を超えて利用する必要があるかどうかは、自治体が個別に判断し、家族が長期入院しているなど、やむをえない事情がある場合には例外的に認められます。

今回、行った調査とは?

障害者の住まいの実態について、NHKは専門家と共同で全国のすべての市町村(※)と東京23区に対しアンケート調査を行い、全体の40%余りにあたる696の市区町村から回答を得ました。(※能登半島地震で大きな被害を受けた6市町は除く)

その結果、規模の大きな「入所施設」や地域の住宅などで少人数で暮らす「グループホーム」の利用を希望しながら空きがないために待機状態にある障害者が少なくとも延べ2万2000人余りいて特に重度の知的障害がある人の住まいが不足していることがわかりました。

回収したアンケート

さらに、調査の中で「ショートステイ」の利用状況を尋ねました。

ショートステイについて国は、特に必要と認められる場合を除き年間の利用日数が180日を超えないようにしなければらないと目安を定めていますが、2022年度の1年間に180日を超えて長期滞在している知的障害者があわせて1286人いることがわかりました。

なぜ長期滞在になる?

その理由を複数回答で尋ねたところ、

利用できる入所施設やグループホームなどの暮らしの場が見つからないため

がおよそ70%と最も多く、ショートステイが、住まいを見つけられない障害者の実質的な受け皿になっている実態が伺えます。

こうしたショートステイでの長期滞在は、福祉事業者の間で「ロングショートステイ」と呼ばれています。

数年間ショートステイ施設に滞在も

利用できるグループホームなどを見つけられず、いわば“仮の住まい”として数年間にわたってショートステイでの暮らしを余儀なくされている人もいます。

大阪・岸和田市にある社会福祉法人「いずみ野福祉会」では、市内にある入所施設の中にあわせて10人が利用できるショートステイの部屋を設けて、介護を担う家族の病気などのため自宅で暮らせなくなった障害者を受け入れています。

本来、短期での受け入れを想定していますが、滞在が長期間に及ぶケースも少なくなく、これまでの10年間で15人が国の目安を超えて、年間の利用日数180日を超えたということです。

法人によりますと、ほとんどが重度の知的障害がある人たちで、介護を担っていた家族が高齢になって自宅で暮らせなくなり、地域のグループホームを探したものの、障害が重いため、利用を断られるなどした人たちが多いということです。


現在も4人の障害者がショートステイでの長期滞在を続けています。

このうち2年余りにわたってショートステイで滞在している20代の男性は、重度の知的障害と自閉症があり気持ちが不安定になるとほかの人をたたいてしまうことがあります。

いまも受け入れてくれるグループホームが見つかっておらず、同じ法人が運営する入所施設への入所も希望しましたが現在、待機者が129人いて、すぐには入ることができないということです。

一方で、ショートステイで長期間滞在するためには自治体の決定が必要で、このまま滞在が認められ続ける保証もなく、将来の見通しが立たない生活が続いています。


いずみ野福祉会 叶原生人 施設長
「ショートステイで暮らし続けている方は、定住できる自分の家がないような状態です。とても不安定な状態で日々の生活を送らなければならず、ベストな状態とは言えないと思っています。なんとか安心できる行き場を確保できるように努力していますが、重度の障害のある方を安心して託せるような住まいは限られているのが現状です」

「生活の根幹が成り立っていない」

NHKと共同で調査を行った、障害福祉に詳しい佛教大学社会福祉学部の田中智子教授は次のように指摘しています。


「そもそもショートステイは短期の利用を目的とした制度なので、そうした施設に長期滞在を余儀なくされている人は、いわば『仮住まい』の状態だ。本来であれば施設の職員は、長期的なスパンで支援内容を組み立てが、“ロングショートステイ”の人の場合は、いつまでその施設にいられるかもわからず長期的な見通しが立てられない中で支援をするしかない。生活の根幹が成り立っていないような状態で人権に関わる重大な問題だ」

そのうえで、こう訴えました。

「調査全体から見えてきたのは特に重い障害のある人たちが暮らす場がないという問題で、きちんと1つの場所で落ち着けるような補助のあり方や人員体制、ハード面の整備など、行政の介入が必要だ」

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