『暗闇のなかの希望』(文庫版その2)希望とは? (「ほんの紹介」76回目)
たこの木通信に6月に送った原稿。
『暗闇のなかの希望』(文庫版その2)
『暗闇のなかの希望』(文庫版その2)
希望とは?
(「ほんの紹介」76回目)
前回に続けて取り上げるのは『暗闇のなかの希望』(文庫版)、暗闇のような社会の話は前号にも書かせてもらったが繰り返し書いてみる。
(「ほんの紹介」76回目)
前回に続けて取り上げるのは『暗闇のなかの希望』(文庫版)、暗闇のような社会の話は前号にも書かせてもらったが繰り返し書いてみる。
・終わらないどころかひどくなる戦争
・止まらない温暖化・気候変動
・政治に背を向ける人の多さ
・飢えや治療可能な病気で亡くなる人の数
・止まらない温暖化・気候変動
・政治に背を向ける人の多さ
・飢えや治療可能な病気で亡くなる人の数
ぼくたちは、この時代の、そんな世界に生きている。「希望」をどこに見つけることができるだろう。そんな思いを抱きがちなぼくに、この本の冒頭(第三版への序文)で著者のレベッカはこんな風に呼びかける。
「あなたの敵は、もう希望はないとあなたが信じることを願っている」
変わりそうにない、こんなひどい社会をひどいものとして認識することは大切だと思う。軽々に希望を語れる状況にないということも。
希望をもつということは、こうした現実を否認することではないと言いつつ、レベッカは希望を語る。「社会なんて変わらない。無力な自分に出来ることなんてない」と誰もがあきらめたら、社会はほんとうに変わらず、ますますひどい方向に突き進む。
この本では「希望とは何か」ということがいくつかの表現で描かれている。たくさんあるが、引用してみる。
「あなたの敵は、もう希望はないとあなたが信じることを願っている」
変わりそうにない、こんなひどい社会をひどいものとして認識することは大切だと思う。軽々に希望を語れる状況にないということも。
希望をもつということは、こうした現実を否認することではないと言いつつ、レベッカは希望を語る。「社会なんて変わらない。無力な自分に出来ることなんてない」と誰もがあきらめたら、社会はほんとうに変わらず、ますますひどい方向に突き進む。
この本では「希望とは何か」ということがいくつかの表現で描かれている。たくさんあるが、引用してみる。
希望は、私たちは何が起きるのかを知らないということ、不確かさの広大な領域にこそ行動の余地があるという前提の中にある。(19頁)
希望とは未知や不可知のものを受け容れることであって、確信的な楽観主義や悲観主義とは違う。(19頁)
希望とは、いつ、どのように意味が生まれ、だれや何にインパクトを与えるのかあらかじめわからないとしても、それでも私たちの為すことに意味があると信じることだ。(20頁)
希望は枝、記憶は根(28頁)
希望は未来にかかわるものだが、その礎は過去の記録と想起にある・・・。(28頁)
物事は常に良く変わるとは限らない。しかし物事は変わる。行動しさえすれば、私たちはその変化の中で何らかの役割を果たすことが出来る。その変化こそが、希望や、記憶、すなわち私たちが歴史と呼ぶ集合的な記憶が生まれる場所なのだ。(29頁)
希望はソファに座って宝くじを握りしめながら幸運を願うこととは違う…。希望とは非常時にあなたがドアを破るための斧であり、希望はあなたを戸外に引きずり出す(47頁)
希望は、単にもうひとつの世界は可能かもしれないということにすぎず、そこには約束も保証もない。希望は行動を求める。希望がなければ行動はできない。(47頁)
希望と行動はお互いを成長させる。(59頁)
また、劇作家だった頃(つまり大統領になる前)のチェコのハヴェルの文章が引用されている。当時彼は収監されていたらしい。
囚人という、とりわけ希望のない状況で私がよく考えている希望とは、世界の状況ではなく 何よりもひとつの精神の状態だと理解している。私たちが内面に希望を持っているか、それとも持っていないか、それは魂の次元であって、必ずしも何らかの世界の様子とか状況の理解に左右されるものではない。希望は予知することではない。それは精神の方向性、心がどこに向いているかだ。・・・。
レベッカは同時に偽りの希望についても言及しブロッホを引用する。『希望の原理』のなかで彼は「欺瞞的な希望は人類に最大の悪を為し、力を奪うもののひとつ・・・」だという。例えば、米国の引き起こす戦争が正義で平和や安定をもたらすものだというような偽りの希望。
ほんとうの希望と偽物の希望をどう見分けるか? 例えばSDGsには両者が入り混じっているように思う。でも、そんなに難しく考えることもないかもしれない。間違っていたら、改めればいいのだから。
ともあれ、この本には人々が行動することで権利を勝ち取ったり、社会を動かしてきた例がいくつも書かれている。社会運動は世界がもっとひどくなることを押しとどめている場合もある。
不完全燃焼で、社会はこんなにひどくて、周りには無関心な人が多くて、希望なんてあるのかと思いがちなぼくがいるので、「もう、全然だめだなぁ」とか思ったときに取り出して、読むといいのだろうなぁ。
ほんとうの希望と偽物の希望をどう見分けるか? 例えばSDGsには両者が入り混じっているように思う。でも、そんなに難しく考えることもないかもしれない。間違っていたら、改めればいいのだから。
ともあれ、この本には人々が行動することで権利を勝ち取ったり、社会を動かしてきた例がいくつも書かれている。社会運動は世界がもっとひどくなることを押しとどめている場合もある。
不完全燃焼で、社会はこんなにひどくて、周りには無関心な人が多くて、希望なんてあるのかと思いがちなぼくがいるので、「もう、全然だめだなぁ」とか思ったときに取り出して、読むといいのだろうなぁ。
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