成人した知的当事者たち、 親もとを離れ地域で暮らすことがなかなか進まないのは何故か? (「ほんの紹介」してない82回目)

2024年12月にたこの木通信に掲載してもらった原稿。
https://tu-ta.seesaa.net/article/506192803.html に書いたものを少し短縮して、通信の原稿にしたもの。


成人した知的当事者たち、
親もとを離れ地域で暮らすことが
なかなか進まないのは何故か?

(「ほんの紹介」してない82回目)

 岩橋さんがちょうど2年前にフェイスブックに書いた問い(タイトルに書いた)を、つい先日紹介していたので、それに触発されて書きました。2年前に岩橋さん書いたのは以下。(部分引用)

 では、なぜそれでは進まないのかを考えた時、それは非常に偶然の産物だからだと思う。

 偶然の産物をより多く生み出すために様々な事に取り組んできたわけだけど、そこにあるのは、「出会いの中で当事者の説明コストをともに引き受けてくれる人」を求めていたかもしれないと思える。

 逆を言えば「説明コスト」という考え方の中で、誰が担い、どうすれば担えるのかを考えていくと、遅々とした歩みではあるが増えつつある知的当事者の自立生活の実現が増えていくように思う。

 「説明コスト」には触れずにタイトルの問いについて考えてみました。 グループホームが増えたのと同時に、そこで暮らす人は増えています。また、「自立生活」(支援つき一人暮らし)をする人の数もそれなりに増えてはいるものの、そんなには増えていないように感じます。たこの木クラブの岩橋さんが書いているのは、その話でしょう。
 例えば、40歳とか50歳を超えて、家族と同居している知的障害者は多いです。8050問題ですが、逆に知的障害のある50代の人が認知症の高齢の親を介助しているケースもあるそうです。家族がどのように考えて同居しているか、調査とかあると興味深いですが、存在するのでしょうか? あれば教えてください。また、それぞれの家庭で理由はひとつではないのでしょう。考えられる理由として推測したのが以下です。

・知的障害のある子どもの年金が生活費の一部になっているから

・家族と離れて暮らせるとは思えないから

・本人が家族と離れることを嫌がっているから

・家族が本人のことが大好きで、できるだけ長くいっしょにいたいから

・本人が家から出て暮らす方法が思いつかないから

・何も考えてないから、いっしょにいる

・本人が家を出て暮らす環境が見つからないから

・親がいなくなった後でも、親以外の同居人が面倒をみてくれるから

・親以外との暮らしについて、入所施設しか考えられないが、入れないから

 他にも要素は考えられるでしょう。また、当事者の家族にとっても、その理由を確定するのは難しいだろうと思います。なかには、はっきりしている例もあるでしょうが。

 さらに、どのタイミングで、家族が当事者と離れて暮らすことを決めて、行動に移すか、という課題もあります。『障害のある子の親である私たち』の著者の福井さんは、子どもが30歳になった時をひとつの目安にしていました。あるいは、家庭での主たる介助者が65歳になったとき、というのを目安にする方法もあるかもしれません。

 重度の知的障害者の場合、家族だけでそれを決めなければならない現状があります。しかし、家族だけでなく、その当事者にかかわる人たちで話し合って、時間と手間をかけてみんなが納得する結論を出してくという方法もあるかもしれないと思いました。

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