東畑さんインタビューが面白かった。
もくじ
第1話(1月22日)
オロオロすることにも意味がある? 臨床心理士・東畑開人さんと考える、困っている人への向き合い方
第2話(1月23日)
勇気を出して、相手の勇気を待つ。根っこにあるのは人への信頼
第1話から
なんか、引用したくなった。引用したいフレーズが多すぎるんだけど。
「ケアとは “ニーズを満たすこと” でもあると本には書いたんですが、 ”気持ちいいこと“ “寂しくないようにすること” も大事だなと思っています」
「日々の生活のなかで誰かと繋がっちゃう、そして心配しちゃう。それはつまり、ケアと出合っていくということでもあるのかなって思うんです」
「ケアは大変なことでもあるんだけど、つながっていく力だとも言えるんじゃないかと思います」
「ケアっていうのは決して特別なことではなく、日常で自然に交わし合っていることなんです。 “おはよう” とか “行ってらっしゃい” って言うのだってケア。ただ一緒に居るというのもケアだと思います」
「ケアとは “ニーズを満たすこと” でもあると本には書いたんですが、 ”気持ちいいこと“ “寂しくないようにすること” も大事だなと思っています。それに、ケアにはもちろん苦しいこともありますが、うまくいくと楽しいこともあるよっていうことも、本で伝えたいことのひとつでした」
「 “寂しくない” っていう感情って、あまり起きないですよね。もしくは、居心地が悪いときは周りの環境が気になるけど、居心地がいいときってそんなに意識しない。人はケアがうまくいっているときは、ケアされていることに気づかないものなんです」
「親が子どもにあまり感謝されないのも、そういうことだと思います。逆に感謝されないということは、ケアがうまくいっていることでもあるんですよね」
「でも、びっくりしてオロオロしていることそのものが、相手にとっては意味があるんです。つまり慌てているっていうことは、相手のメッセージをしっかり受け止めているということでもあるわけですから。
逆にあまりにも悠然と対応していたら、相手は自分の苦しみがスルーされていると感じてしまうかもしれない。僕だって誰かに辛いことを相談したときに相手が動揺しているほうが、少し気が楽になると思います。自分だけが不安なわけじゃないんだって。
オロオロするほうが、相手の心に近づいているんじゃないかと思うし、そのことが重要なんだと思います」
「医療とかのモデルだと、 “この症状にはこの薬” みたいな適切な対処法があって、それを行えば問題解決ってことになりますけど、心の場合は、やっぱりそうはいかない。正解がないのが心のケアなんです。
だから間違った対応をすること自体は、仕方ないのではと思います。失敗を受け止めて、余裕があるときにまたリカバーすればいい」
「たとえば何かの相談を受けた時に、その場でいい回答をしなくちゃいけないっていうプレッシャーや、これを言ったらすごく傷ついちゃうんじゃないかって不安があると思うんです。
でも、あまり短い時間スパンで考えなくたっていいんですよ。もしも “あんなこと言わなきゃよかったな” と思ったら、悶々としてないで相手にそう言えばいい。いい回答が思いつかなかったら “ちょっと考えとく” とか “また話そう” って言えばいい。
1回きりでいい結果を出そうと考えず、もっと長期的に考えるといいんだと思います。心のケアで一番大事なのは、相手を孤独にしないことであり、つながり続けていくことですから」
「身近な人のケアにおいても、万能でパーフェクトでいるより、ときどき失敗している方が、相手も現実的になって、お互いの間にインタラクションが生まれていく。たぶん現実っていうのは、そうできているんですよ。失敗はありうるって思っている方が、失敗したときのダメージが少なくて済む気がしますしね」
後編
「ケアとは傷つけないこと、相手の依存を引き受けてニーズを満たしてあげること。これに対して、セラピーとは本人が自分の傷つきに向き合って、自分の課題に取り組むことなんです」
「大事なのは、セラピーはケアが十分足りているときにのみ可能になるということ。最初から子どもに『学校で何かあったの?』と問い詰めても、子どもは打ち明けにくいでしょう。何日か休ませてもらうことでケアされていて、初めて自分の傷つきと向き合えるわけです。
ケアが先に来て、その後にセラピーが来て、またケアが来て、再びセラピーが来て。そうやってケアとセラピーが程よいバランスでグルグルまわることで、心が安定していくんだと思います」
「ケアがなされたら、自然と勇気が湧いてくるはずなんだけど、大事なのはケアする側が本人に任せる必要があるということなんです。つまり、相手の勇気を待つんですよね。
そのためには、ケアする側も勇気を出して相手を手放し、見守ることが大事。だけどそれが案外難しいんですよ。ケアをし続けるより、手放す方がよっぽど大変なときがある。自分が不安で、相手を信頼しきれないからケアを続けちゃうことってあると思います」
「ケアって、相手のニーズを満たしながら安全にコントロールしておくことでもある。ケアと支配は紙一重なんですよ。だから時々行き過ぎてしまうことがあるんです。
そうすると、相手も嫌だというサインを出してくるわけです。直接嫌だとは言わないまでも、体調を崩すとか、さらにふさぎこむとか。そのときに、ケアする側も “何かが間違っていたのかも” と気づく。
そういうプロセスを通じて、ケアする人は苦しい思いをしながらも、自分の知らなかった正しさに出合っていくし、相手への理解を深めていく。そんなふうにして、相手と仲良くなっていくし、自分のものの見方も広がっていくんですよね」
「どうしたらいいか分からなくなったときも、とにかく相談するのがいいと思います。誰に相談すればいいかが分からない場合は、そのことを誰かに相談してみる。たとえば詳しい話はしないまま、上司に “家族のことで困っているんだけど、誰に相談すればいいですかね” って言ってみるとかね。そうやって、とりあえずボールを投げてみればいいんじゃないかな。相談の力って圧倒的だと思いますよ」
「僕自身、これまでこの仕事を続けるなかで、すごくたくさんの人に助けてもらったんですよね。本来はすごく不信感が強い人間なんですけど、そのせいでたくさん失敗もしてきましたし。だから人とつながることが一番大事だという思いは、僕の中では揺るぎないものなんです」
「心が不調の “雨の日” には、お互いのことを信じられなくなるところから始まるわけです。目の前にいる、どう接すればいいか分からなくなってしまった相手をケアしながら、どうやってまた信じられるようになるかということを探っていく。その際の助けを借りるために、自分の周りの人を信頼してみる。
ケアって “信じる” がとにかく試されるのだと思います」
「ケアって基本的には同じことが繰り返されるし、あまり何も起きません。同じことが繰り返されてるのはいい状態でもあるんですが、逆に言うとなかなか成果が見えないから “私、何やってんだろう” って思いやすいですよね。
でも、あまり変化がないなかで、たまに相手が勇気を出す瞬間を目撃するんです。いままでできなかったことや怖がっていたことをやってみようとしている。失敗するかもしれないけど、チャレンジしようとしている。
そうやって本人が変わろうとする瞬間を目撃すると、すごく感動します。その姿にこれまで積み重ねてきたことを感じるのかもしれません」
「それにケアをしていると、いままで1人でいろんなことをやってきたと思っていたけれど、実はいろんな人が自分のことを支えてくれていた=自分もケアされていたんだということにも気づく。これ自体も喜びだと思います。
基本的にケアは大変ですが、ときどきうれしいことだってある。だから僕もカウンセリングの仕事が好きなんだと思います」
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