『精神科の薬について知っておいてほしいこと』について(ほんの紹介93回目)

たこの木通信、2025年11月に掲載してもらった「ほんの紹介」


『精神科の薬について知っておいてほしいこと』について
(ほんの紹介93回目)

 『精神科の薬について知っておいてほしいこと』というのが今回、取りあげる本のタイトル。薬が過度に処方され、その副作用が等閑視される現状を具体的に、そして明確に批判する本。読書メーターを見たら、「医者が読んでくれ()」と書き始めている人がいた。「好きで薬を飲んでるわけでもないのに」ってことだと思う。同時に、この本で書かれているように安易に薬を出し過ぎる精神医療に代わるものが準備されていない現状もまた、大きな課題を抱えている。

 「はじめに」で著者は以下のように書く。

 私は精神科医です。精神科の薬の使用すべてに反対しているわけではありません。ただ、精神科の薬の作用が根本的に誤解されていて、薬の効果が過大に評価され、薬の害が過小に評価されているのではないか、ということを心配しています。精神科の薬は、有毒となりうる物質です。それはよくわからない仕方で、身体と脳の働き方を変えてしまいます。服薬にはリスクに見合う価値がある場合もありますが、そうではない場合もあります。この本で皆さんに伝えたいのはそのことです。
(中略)
 精神科の薬は、(…)「抗精神病薬」や「抗うつ薬」などのように、特定の精神疾患に抗する物質として販売されたりしています。しかし、薬の実際の効果はごくわずかです。他方で、実証された、時にはとても大きな障害をもたらす薬の作用は、耐えるべき副作用とみなされることも珍しくありません。

 この無節操なマーケティングは、精神科医療を薬中心のものにしてしまい、人間の主体性や治療に混乱をもたらしています。患者は薬についてのしっかりした情報を知らされないために、薬物治療についてほとんど何も言えないということがよくあります。また、薬を拒否すると、治療に非協力的だとみなされてしまいます。(略)

 精神医療の仕事の中心は、本人とその社会的ネットワークのうちにある人たちが主体性を持って協力しあうことを助け、その人たち自身の意思決定を尊重することにあるのではないでしょうか。

 このような内容が、精神医療の歴史や、薬物作用の具体的な研究論文によって、裏打ちされ、わかりやすく書いてある本なのだが、そのために示される「疾病中心(diseaase-centred)」モデルと「薬物作用(drug-centred)」モデルの説明が、ぼくにはとてもわかりにくかった。

 drug-centred(薬中心)って、なんだよって思う。これに関する説明は書かれているのだが、このモデルの名前がぼくを混乱させる。

 ともあれ、精神科の薬(薬からの離脱の困難さ)の問題と、その現状についてはわかりやすく、ここに書かれている。

 また「精神科の薬を飲む時に主治医に尋ねるべきこと」という9項目も興味深い。例えば、3、・・・その効果は人生に意味ある違いをもたらすか?  4、薬を飲まないで回復・改善する可能性はどれくらいあるか? など。

 最後に「訳者あとがき」があり、日本の精神科医でもある二人の訳者も、薬をそれなりに使っている現状と、この本に書かれていることの狭間で苦闘している姿も垣間見えた。
~~~~

 この文章のもとになった、やたら長い読書メモは以下
https://tu-ta.seesaa.net/article/518897755.html

精神科の薬について知って.jpg

この記事へのコメント